コンタクトセンターの運営をされている企業の管理者や企画を担当されているの方の中には、チャットボットの導入を検討するケースがが増えていると思います。一方で、チャットボットを導入して得られる効果を社内に向けて具体的に説明できずに苦労していたり、導入したものの想定していた効果が出ずにその理由を知りたい、改善したいという方も多いのではないでしょうか。本記事では、チャットボットの種類やメリット・デメリット、そして一般的に言われている効果だけではなく、その後に得られる“本当の価値”について解説していきます。
目次
コンタクトセンターでチャットボットの導入を検討し始めるきっかけとして多いのは、人手不足の解消ではないでしょうか。多くのコンタクトセンターでは平均応答時間を短縮し、つながりやすいコンタクトセンター、ひいては顧客満足度の向上を目指していると思います。しかし、平均応答時間の短縮はなかなか難しい課題であり、解決には至っていません。平均応答時間が長くなる原因は様々ですが、一因としてオペレーター不足が挙げられます。理由は、入電数>オペレーター数になるとお客様を待たせ続けることになり、応答するまでの時間も必然的に長くなるからです。
この状況を解消するためにはオペレーターを増やせばよいということなのですが、そう単純にはいきません。労働集約型産業であるコンタクトセンターは「人」で成り立つ部門ですが、それゆえに「人」のスキルへの依存が大きくなります。そしてオペレーターの業務の難易度が高くなる傾向にあります。さらに、一般的な問い合わせだけでなくいわゆるクレーム対応も行うケースも当然あります。そして「キツイ」という業界イメージから採用や育成、定着化がうまくいかないケースが出てくるのです。 そこで白羽の矢がたつのがチャットボットです。チャットボットはオペレーターに代わってお客様の問い合わせや質問に自動で対応してくれるため、オペレーターの負荷を軽減し人手不足解消の画期的な解決策になり得ます。これがコンタクトセンターにチャットボットが必要な理由としてよく言われることではないでしょうか。しかし弊社は、チャットボットの本当の価値は他にもあると考えています。その理由を説明する前に、コンタクトセンターにおけるチャットボットの位置づけと、チャットボットの種類について整理したいと思います。
これまでもコンタクトセンターでは、WEBの問い合わせフォームの設置によるコール数の削減や、有人チャットの導入による応答時間短縮といった対策を行ってきました。このような対策とチャットボットを組み合わせることで、さらに効率的なコンタクトセンターを実現できると考えられます。以下の図は、お客様とのコミュニケーションの構造のイメージです。
図1
フロントにあるチャネルが多くの問い合わせを前捌きし、フロントで解決できない内容を後ろのチャネルで巻き取っていくモデルになっています。後ろのチャネルになればなるほど問い合わせの数が減り、お客様とオペレーターが1:1で対応する電話チャネルでは、最も問い合わせの数が減ります。つまり、「人」で対応するチャネルの前にチャットボットを配置し、「人」が対応する問い合わせの数を極小化し、入電数<オペレーター数の達成を目指す構図です。
そしてそのチャットボットは大きく2つに分類できます。それが「ツリー型」と「AI型」です。「ツリー型」とはチャット欄に選択肢・設問を表示し、お客様が選択肢から1つを選ぶことで、次の選択肢が表示され、最終的に答えにたどり着く形式です。設定により選択肢と回答がツリー状の構造に繋がっている形式から「ツリー型」と呼ばれたり、メニューが表示される形式から「メニュー型」と呼ばれたりしています。本記事では「ツリー型」と表現します。
「AI型」とは、その名の通りAIが問い合わせに回答してくれる形式です。お客様は人とチャットするように問い合わせをチャット欄に書き込みます。AIは書き込まれた内容を解析・判断し、適切と思われる回答を表示します。
いずれの場合も、あらかじめ用意した一問一答形式の回答を複数候補提示するのが一般的です。このため、チャットボットはFAQと組み合わせて利用されることが多くなります。回答を表示するまでのプロセスが異なるだけですが、それぞれにメリットとデメリットがありますので最適な選択ができるように、以下の表にまとめました。
表1
ツリー型とAI型のメリットとデメリットの種類や内容について詳しく見ていきましょう。
サービスの検討のしやすさです。ツリー型は機能が明確な分検討しやすいですが、AI型はAI自体がブラックボックス化されていることが多いです。よって同じAI型でも違いが分かりづらいため検討の際に時間がかかりがちです。
導入段階でユーザーで必要な準備作業の量や難易度です。ツリー型はツリー構造の設計や実装が必要です。AI型は構造の設計などは不要ですが、AIに事前に学習させるための教師データを準備したり、単語の辞書登録を行ったりする作業が必要です。
商品・サービスの価格です。契約するオプションなどにもよるため一概には言えませんが、一般的にはAI型の方がコストが高くなることが多いようです。
導入後に発生するメンテナンスのしやすさです。ツリー型は構造が設計されているためメンテナンス箇所を明確に示すことが可能です。一方でAI型のメンテナンスはAIのチューニング作業になるため、根気強くトライアンドエラーを繰り返す必要があります。
メンテナンス性とは逆にツリー型は構造がしっかりとしている分、容易な変更ができず、問い合わせパターンや知識の追加などに時間がかかる場合が多いです。AI型は構造が固定化されるものではないため、AIがきちんと学習して育ってさえいれば回答を追加するだけで対応できます。
ツリー型は回答を得るまでのプロセスが長く途中離脱の原因になり得ます。一方、AI型は回答がすぐに提示されるためユーザビリティは高いと言えます。さらにAI技術は改善を繰り返して高度に発達していますので、今後はAI型のユーザビリティーはさらに高くなっていくと思われます。
クラウド化・効率化を考える第一歩目にピッタリ コンタクトセンターソリューション基本ガイドブック
「ツリー型」でも「AI型」でも、あらかじめ用意した一問一答形式の回答を表示するのが一般的と書きました。逆に言えば、あらかじめ想定していない問い合わせについてはチャットボットでは回答できないということです。これはつまりどういう意味なのでしょうか。
図1で示した通り、チャットボットで答えられない内容が後ろのチャネルに流れていくことになります。よって一問一答形式では答えられない問い合わせを「人」が対応することになります。そして、一問一答形式では答えられない問い合わせは多くの場合、そのお客様自身では解決が困難であり専門家の助けが必要な状況にあります。専門家とは「人」、つまりコンタクトセンターのオペレーターやスーパーバイザー(SV)です。
オペレーターやスーパーバイザー(SV)の貴重な時間やスキルを、一問一答形式で答えられる問い合わせ作業に費やすのはコストパフォーマンスの面から考えると大変非効率です。何より本当に困っているお客様の問題を解決することこそが、顧客満足度の向上に大きく貢献します。このような時間の使い方ができるようになれる姿こそ、チャットボットの“本当の価値”なのです。
図1のイメージから、問い合わせをふるいにかけて減らしていくイメージを持たれていた方も多いと思います。実際、問い合わせの量を減らす効果も一時的にはあると思います。ですが、ふるいにかけて見つけ出したいのは時間やスキルを用いる必要がある問い合わせです。いうなれば問い合わせの量ではなく、問い合わせの質をふるいにかけているということです。
コンタクトセンターのクラウド化の課題解決に Amazon Connect機能と新テクノロジーがわかるガイドブック
「コンタクトセンター チャットボットのメリット・デメリット 効果から本当の価値へ」と題しまして、ご説明してまいりました。コンタクトセンター業界は人材の不足が深刻でどのように人を確保するかという検討に偏りがちです。
しかし、運よく人材を確保できても教育や定着化が必要となり、また人件費も増えることになるため、今度はコスト面での負担が大きくなってきます。チャットボットはそんな悩みを解消する可能性を秘めています。理由は「人」が対応しなくてよい単純な問い合わせはチャットボットが前捌きし、このサポートしてにより「人」が対応すべき質の高い問い合わせだけをオペレーターやスーパーバイザー(SV)が対応できるようになるからです。チャットボットを活用し、コンタクトセンターの人材不足の課題解決を目指してみてはいかがでしょうか?
当サイトでは、コールセンター/コンタクトセンターの作り方や、最新のIT活用を学びたい方へ、ダウンロード資料を多数ご提供しております。ぜひダウンロードいただき、資料をご活用ください。
2024年11月05日
コンタクトセンターのノンボイス化のメリット/デメリット、ノンボイス化のポイントを解説(Vol.87)
2024年10月21日
Marketing Cloudの連絡禁止リスト・初心者向け解説(Vol.86)
2024年10月15日
データドリブン企業になるための第一歩:Salesforce Data Cloud トライアルパッケージ(POC)のポイント(Vol.85)
2024年09月30日
顧客情報の部門横断活用 BtoB製造業での3つのポイント(Vol.84)
2024年09月24日
PIM-PLM-CRMのデータ連携 製造業DX 3つの要素で顧客満足を勝ち取ろう(Vol.83)
2024年09月17日
顧客ロイヤルティ向上に効く!MA活用の実践テクニック(Vol.82)
全社的なDX推進や顧客接点の最適化、エンゲージメントの強化などお困りごとやお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。