コールセンターの自社内での新規立ち上げと運用を検討しているとき「何からはじめるべき?」「何の費用がかかる?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、コールセンターの立ち上げ時に必要となるシステム設計や人材確保の方法、かかる費用、具体的なコールセンター構築のプロセスや手順を解説します。知っておきたい注意点についても触れていますので、本記事の各見出しを、目次やFAQのようにご活用ください。
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目次
それぞれの手順の詳細を、次の章から順に解説していきます。
コールセンターの立ち上げを検討しているとき、まずやるべきことがゴール設定と、現状の課題の洗い出しです。具体的なコールセンターの設計プロセスに入る前にやるべき、ゴール設定と課題の把握について解説します。
最初にコールセンターを設置する目的と、目的に合わせた目標設定を行います。コールセンター設置の目的が曖昧になると、今後設計すべき業務プロセスや役職が曖昧になったり、効果を発揮できなかったりといった問題が発生する可能性が高いです。「顧客満足度の向上」「売上アップ」「リピーターの増加」など、コールセンター設置で目指すべきゴールをまずは設定しましょう。
コールセンターのゴールを達成するために、KGIとKPIを設定します。KGIとは「Key Goal Indicators」の略で、日本語では「重要目標達成指標」といいます。売上高や利益率など、最終目標に結びつく指標をKGIとして設定しましょう。
KPIは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」です。KGI達成までの中間指標となり、応対・接続品質や顧客満足度、離職率などKPIの候補となる指標は多くあります。
まずコールセンターのゴールを考え、ゴール達成のためのKGI設定を行ったら、KGI達成のためのKPIを設定するのがおすすめです。KGIとKPIを設定することで、コールセンターの最終目標を達成するまでの進捗状況や成果を可視化できます。
コールセンターを設置していないことで発生している課題や現状を、以下のポイントごとに洗い出します。
現状発生している課題を解決する手段としてコールセンター立ち上げに着手すれば、スムーズな業務プロセスやシステム構築につながるでしょう。
コールセンターの目標や現状、課題の洗い出しが終わったら、目標達成と課題解決につながるコールセンターの業務プロセス、システム構築のプランニングに移ります。プランニングで設計するのは、以下の3つです。
それぞれの設計方法について紹介します。
コールセンターで実際に行う業務プロセスの設計に入ります。課題解決や目標達成に必要となる自社のコールセンターの機能の調査と洗い出し、作業を行うプロセスを整理します。決定すべき業務プロセスを、以下にまとめました。
前工程で設計した業務プロセスを管理する方法と、項目を決めます。業務プロセスの詳細まで決めたとしても、適切な手順や自社の状況に合わせた項目設定が行われていないと、コールセンターで期待する成果を上げることはできません。
管理項目の例には、以下のものがあります。
項目は数値化することで、目標達成までの進捗が確認しやすくなり、コールセンター全体で共有して管理ができます。予想通りの成果が上がらないときには、業務プロセスの改善や見直しが必要です。改善や見直しのための判断基準をマネジメント上で合わせて決めておくと、より成果の上がるコールセンター運用につながるでしょう。
コールセンターの構築に向けて、必要な工数の計算と運用に必要な組織体制の設計を行います。まず設計した業務プロセスで発生する工数を計算して、構築・運用に必要な人員を割り出しましょう。設定したコールセンターの目標を達成するために提供するサービス内容や実際の作業を明確にすると、設置が必要な職務とスタッフの数が把握できます。
構築したいコールセンターの規模によっても必要な人数や工程数は異なってきます。たとえば小規模なコールセンターなら少ない人材で済むため自社のリソースで足りることもありますが、大規模なコールセンターの場合工程数も増えるため、必要な人数も多くなります。自社で人材をまかなえない場合は、規模を縮小する、委託や外注を検討するといった対策も必要です。自社のコールセンターに合わせた工程と人数を正確に算出しましょう。
コールセンターに必要なオペレーター人数の算出方法はいくつかありますが、よく知られている計算式として「アーランC式(必要要員算出式)」というものがあります。
この算出式では、1時間あたりの着信呼数、1呼あたりの必要処理時間、目標の応答時間といった要素に基づいて、必要なオペレーターの数を求めます。 コールセンターの管理者がアーランC式を用いるときには、上記の複雑な計算式自体を理解したり、いちいち計算したりせずとも、インターネット上で無料で計算できるサイトなどを活用できます。 「アーラン計算 無料」といったワードでぜひWeb検索してみてください。
また、コールセンターの人数を考えるにあたっては、センターの営業時間に対するシフト数を検討しておくことも大切です。全体的な通話数のほか、時間帯別の需要の偏りまで把握した後、オペレーター一人あたりの必要処理時間を計算して、時間帯ごとに必要な人数を算出します。シフト組みにあたっては、当然のことながらオペレーターの休憩や交代時間も考慮する必要があります。
顧客へ品質の高いサービスを提供するには、優秀な人材の確保が必須です。コールセンターでは、オペレーターをはじめとした人材が顧客と接点を持ちます。オペレーターから良い対応を受けられれば顧客満足度は高まりますが、オペレーターの対応が不適切だと顧客満足度が下がったり、企業のイメージダウンになったりといったリスクがあります。
優秀な人材を確保するための方法やステップを、順に解説します。
決めた業務プロセスや必要な工程、人数に合わせた人材の採用計画を立てます。コールセンター人材の採用競争は激化している傾向にあるため、優秀な人材を確保するために応募者に選ばれるコールセンターづくりが重要です。以下のような、自社のコールセンターで働くことで得られるメリットを応募者へ提示しましょう。
コールセンターだけでなく、多くの業種や職種で人手不足が発生しています。採用したスタッフの離職を防ぐために、安心して働ける職場環境やサポート体制、教育体制を整えておきましょう。
スタッフへ十分な教育を行うために、以下を用意しておきます。
コールセンターでの応対をはじめとした、必要なスキルや知識を身につけるための以下の研修も実施します。
研修内容が退屈なものの場合、採用したスタッフがコールセンター業務をはじめる前に離脱してしまう可能性があります。以下のようなスタッフが飽きないような内容を研修に盛り込みましょう。
研修を実施する総時間については、人数規模や教育すべきサービス内容の量などによっても異なりますが、小規模なコールセンター、および画一的な業務内容の場合で3日間(3×8時間= 24時間)ほど、一定以上に教育すべき内容があったり、オペレーター着座初期から高い対応品質を求めたい場合などには20日間(20×8時間= 160時間)ほどを設けるのが一般的です。 さらに高度な専門知識が必要なコールセンターでは、研修期間が60日間(60×8時間= 480時間)程度まで伸びることもあります。
充実した研修を実施し、スタッフの定着率を上げることが重要です。
設計した業務プロセスや人材確保の方法に沿って、コールセンターの実際の立ち上げに着手します。具体的なコールセンターのシステム構築のステップについて順に解説します。
コールセンターを稼働させるために必要な、以下のハード面の整備を行います。
電話回線は、市外局番から始まる通常の電話番号だけでなくフリーダイヤルも用意しておきます。 また実際に運用のために外線から着信するために構内交換機(PBX)などのほか、顧客を案内するためのアナウンスや通話録音のためのシステムも合わせて準備します。
会社内の既存のネットワークとコールセンターのネットワークについて、セキュリティポリシーに基づき接続設定を行います。コールセンターは個人情報を取り扱うため、高いセキュリティの構築が必須です。
コールセンターファシリティとは、コールセンター内の各設備のことです。コールセンターの内部レイアウトをまず決めてから、以下のような必要な設備を発注し、設置します。
ハード面での準備は電話配線工事やインターネット開通工事など、スケジュールが決められているものも多いです。工事のスケジュールを把握し、準備を進めましょう。
コールセンターを構築する場合、コールセンターシステムを導入するケースが多いです。システムと連携するCRMツールや他のシステムといった、ソフト面の整備を行います。
ツールやシステムは、スタッフの操作性などを検証しつつ、適切なものを選ぶことが重要です。ツールやシステムを導入したら、実際の操作性などを検証しつつ、各種設定や管理者権限の付帯などを確実に進めましょう。
コールセンターの一定の品質を保つために、以下の業務や管理マニュアルを整備します。
マニュアルは、作成者に必要な内容を伝えて作成を進めます。たとえばオペレーター向けマニュアルなら受付や応対のスクリプト、パソコンやシステムの操作手順や使い方、上司への報告方法など、マニュアルに必要な情報を伝えましょう。
業務プロセスや工程、人数に合わせて、以下のような適切なポジションや役割を配置します。
オペレーターがシフト制で勤務する場合は、シフトに関するルール整備も必要です。
コールセンターの立ち上げで発生する費用の内訳や詳細を解説します。
コールセンター立ち上げ時には、以下のような最低限必要な費用が発生します。
工事費用や電話機は、立ち上げるコールセンターの規模によって変動します。コールセンターシステムは、オンプレミス型かクラウド型によっても、費用は異なります。初期費用は高額となる場合が多いため、資金を圧迫してしまう場合にはコールセンターの規模を見直すといった対策も必要です。
コールセンターシステムについての詳細は、後ほど詳しく解説します。
コールセンターの運営には、オペレーターや管理者などの人材の採用・育成費用が発生します。オペレーターひとりあたりのフルタイム雇用の費用に加えて、交通費や残業代なども追加で発生します。
人材募集を行う場合には、広告掲載費用なども必要です。広告には、掲載時に費用が発生する広告掲載型か、採用に至ったときのみ費用が発生する成果報酬型があります。さらに掲載する箇所や広告の大きさによっても、広告の費用は変動します。
スタッフのスキルや正社員、契約社員といった雇用形態によってもスタッフに発生する給与は異なります。人件費も踏まえて、立ち上げ時の人数を決めることが重要です。
コールセンターの維持管理には、以下の費用が発生します。
オフィスの賃料やコールセンターシステムの使用料といった、月額固定費で変動のない費用もあれば、諸費用など変動しやすい費用もあります。維持管理費については発生する費用をあらかじめ予測しておき、範囲内で資金を運用する方法を検討しておくことがおすすめです。
コールセンターを新しく立ち上げる際に覚えておきたい、注意点や成功のためのポイントを順に解説します。
自社でコールセンターを立ち上げる場合、コストバランスと規模が適切かどうかを十分に検討しましょう。コールセンターの立ち上げ時は多くの費用が発生し、場合によっては予算オーバーとなってしまうこともあるでしょう。予算に応じた規模を検討することが重要です。 小規模であっても、優秀なオペレーターやすぐれたシステムを導入すれば、顧客満足度が上げられる応対は実現できます。コールセンターの規模は後から拡大することも可能です。立ち上げ時は予算オーバーとならないように、発生するコストを明確にしましょう。万が一コストが予算よりもかかりすぎる場合は、以下のような対応を検討することも重要です。
コールセンターを円滑に運用するために、速度・容量ともに十分な通信インフラを整備しましょう。速度や容量不足だと、オペレーターがCRMシステムやWebサイトにアクセスする時間が長く発生します。 また、電話回線数が呼量に対して不十分だと、架電が集中した場合につながりにくい状態が続くでしょう。通話中に顧客を待たせてしまったり、つながりにくくなったりするため、顧客満足度が下がってしまうことがあります。スムーズに対応できるように、安定した通信インフラや電話回線数を整えておくことは必須です。
コールセンターでは個人情報をはじめとした機密情報も取り扱います。重大インシデントやトラブルを防ぐために、下記のようなセキュリティ対策を行いましょう。
在宅コールセンターを導入する場合にも、社外へ情報が漏れないように強固なセキュリティ環境を構築することが重要です。
新規でコールセンターを立ち上げる場合、オペレーターや管理者などの人材が必要です。一方で、自社にコールセンターの運営ノウハウが蓄積されていない場合、人材育成や確保は難しいといえます。必要に応じて、一部業務に外注(アウトソーシング)を活用するなどの選択肢も検討しましょう。
コールセンター運用で導入するコールセンターシステムは、自社の業務に合うシステムを導入するようにしましょう。コールセンターの品質維持や、目標達成のためには必要な機能を網羅しているシステムを選ぶことが大切です。
コールセンターシステムを選ぶ際には、事前に自社に何の機能が必要かどうかを把握しておくことが重要です。
コールセンターの立ち上げに必須となるのがコールセンターシステムです。コールセンターシステムは、オペレーターが電話応対を行うだけでなく、多くのデータを取り扱うシステムと連携して、情報を処理しながら業務を行います。
コールセンターシステムの持つ具体的な機能について解説します。
コールセンター構築に必要となるコールセンターシステムには、オンプレミス型とクラウド型があります。
オンプレミス型とは、サーバー構築や周辺機器の購入、さらにシステムの運営や保守もすべて自社で行うコールセンターシステムです。コールセンターの規模によって求められるサーバーの性能は異なりますが、目安としては数十万円~数百万程度の初期費用から導入できます。但し、大規模なシステムを構築する際などに、専門的な機器の購入費用として数千万円ほどがかかる場合もあります。
初期費用は高くなるものの、クラウド型のように月額制でのライセンス利用料が発生しません。中長期的な運用の場合ランニングコストを抑えられるというメリットがあります。
クラウド型とは、サービス提供事業者が運営・保守しているクラウド上のサーバーを利用したコールセンターシステムです。サーバーや周辺機器などを自社で購入する必要がないため、システム構築で発生する初期費用が抑えられるのがメリットです。
利用には専用のライセンス契約が必要となり、月々に利用料金が発生するサブスクリプション型の料金体系を取っているサービスが多いです。また、ユーザー数によっては上位ライセンスやプランの契約が必要なため、大規模なコールセンターの場合ランニングコストが高くなる傾向にあります。
コールセンターシステムは、主に以下のような、さまざまな機器や機能で構成されています。
PBXとは、外線と内線とをつなぐ交換機です。代表番号にかかってきた複数の外線電話を集約し、複数のオペレーターへ割り振り、つなげます。
CTIはオペレーターをサポートする機能です。コンピューターと電話を統合し、コールセンターの運営をスムーズに進められる機能が搭載されています。
CRMは応対した内容を記録し、顧客を管理できるシステムです。後日、再度顧客から電話があった場合、CRMの記録を活用し異なるオペレーターでも応対ができます。
通話録音装置は、顧客との通話内容を録音する装置です。録音から内容の確認やオペレーターの対応の振り返りに活用できます。近年では、自動で音声データをテキストデータに変換する、文字起こし機能が搭載されたものもあります。
SMS送信サービスは、携帯電話やスマートフォンのショートメールにメッセージを送信できるサービスです。SMSは文字数制限があり電話ほどの細かい情報は届けられない一方で、電話を取ってもらえない顧客に対しても確実に重要な情報を届けられる、という利点があります。
また現代においては、電話だけでなく、マルチチャネルでの顧客接点を持つ「コンタクトセンター」の立ち上げを目指す企業も多くあります。コンタクトセンターの立ち上げを検討する場合、チャネル同士での連携が上手くいかないまま問い合わせ量が増加し、業務の複雑化を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。 コンタクトセンターの立ち上げ時は、外部のソリューションサービスの利用も検討してみましょう。たとえば電通総研のコンタクトセンターソリューションでは、マルチチャネルをひとつに統合することで、顧客満足度と顧客体験の向上につなげるコンタクトセンターの構築を実現します。お気軽にご相談ください。
コールセンターの立ち上げに必要な手順や費用、注意点について解説しました。コールセンターを立ち上げる際には、目的を明確にし、必要な人材や機能を持つコールセンターシステムの採用が必要です。売上アップや顧客満足度の向上につながるコールセンターの立ち上げを実現させましょう。 次世代コンタクトセンターソリューションのページでは生成AIなどの各種ソリューションのご紹介をしております。
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