皆さんは、製造業におけるPLM「Product Lifecycle Management」やCRM「Customer Relationship Management」が、顧客接点の改革活動にどの程度貢献しているかご存じですか?
PLMとは、製品の企画段階から設計開発、製造、販売、保守までのライフサイクル全体を管理する手法です。 それぞれの段階におけるプロセスに関連を持たせ、業務の効率化やモノづくり事態の強化を図ることができます。
製造業は、世の中に売れる製品を早く安く投入したいでしょう。一方、利益を最大化するために、「製造業DX」の取組みとしてPLMやCRMなどのシステムを導入し、品質向上やコスト削減、顧客満足度向上を目指しています。
また、製品市場投入後のカスタマサクセス活動では、顧客毎に求められる製品やサービスをCRMの情報から判断し、顧客へのサービス提供に取り組んでいます。
昨今では、顧客が製品のことを知りたければWebで検索すれば良くなり、顧客ニーズの多様化は加速する一方です。
PLMやCRMにおける「情報」の重要性について考え、製造業が本来持たなければならない「情報」とその情報をどのように「循環」させて行けばよいのか一緒に考えてみませんか。
本記事では、以下の3点について解説していきます。
製造業のDXに欠かせないPLMとCRMとのデータ循環のしくみ ~ユースケースを交えこれからの取組みを解説~
目次
PLMは設計・開発部門における情報一元管理で利用されており、CRMは顧客情報と案件情報を管理できるシステムとして利用されています。
以前のPLMは、設計・開発部門でCADデータや2次元図面、部品表、ドキュメント類、を一元的に管理していました。同様の構造部品に対して流用設計やチームでの同時設計を推進するためのPDM(Product Data Management)システムの導入が盛んに行われてきました。
昨今では、製造業を取り巻く環境変化(ニーズの多様化、グローバル化など)により、PDMは設計・開発部門だけの情報ではなく、モノづくり全体の情報として扱っています。QCDの向上に向けた取り組みのひとつとして現在のPLMの形に変化をしてきたといえます。
CRMはお客様の情報をまとめて管理し、商談の情報や、案件の進捗、トラブル情報、クレーム情報等、様々な情報を同時に管理しています。社内のヒトが同じ情報を同じタイミングで見ることができる仕組みとなっています。
もともとは1990年頃、「情報化社会」なんて言葉がでてきました。振り返ればちょうどこの頃から「情報」の重要性は語られ始めたのかもしれませんね。
また、インターネットやスマホの普及により、個人が触れることのできる「情報量」は飛躍的に増加してきたと言えます。情報量が増えれば当然の様に、顧客のニーズは多様化してきます。そして、顧客の満足度を向上させるための施策が重要となってくるのです。
製造業ではPLMやERP(Enterprise Resources Planning)を早くから導入し、設計・開発における品質の管理や、ヒト・モノ・カネに係る情報を管理してきました。既に長年利用されているしくみであり、業務には欠かせないシステムのひとつになっているでしょう。
一方、CRMは、お客様の情報を一元的にまとめて管理し、その情報をお客様と会話する際に活用しています。お客様との会話を円滑にする使い方などが、最近のトレンドになっているのではないでしょうか。
さらに、過去に起こったお客様とのトラブルの情報(製品不具合、対応における問題)や、お客様がこれまでに購入された製品に係る情報(購入履歴など)を参考にしています。問い合わせ窓口から、営業、さらにはマーケティング活動に利用するケースも増えてきています。
しかし、お客様から頂いた「直接の声」は、コールセンターやマーケティング活動では活かされていますが、肝心のモノづくりにはどう活かされているのでしょうか。
設計・開発部門の方が、CRMの情報を手軽に覗き、まさに今起こっている事象やコメントを見て、今日設計している製品に何らか考慮するポイントが出てきたら、これからの製品開発は大きく変わると思いませんか?
そして、設計・開発の方がお客様のコメントに沿って対応した内容に関しては、その後のお客様からの評価を、できるだけ早くCRM上で共有しましょう。設計・開発の方以外の社内の多くの人がトラッキングできる仕組みの構築ができれば、大きな効果を得ることができると思います。
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カスタマサクセスとは製品やサービスを購入いただいたお客様に継続的に接点を持ち、購入して頂いた製品やサービスをより活用して頂くための企業の取り組みのことです。
企業は販売後のサポートサービスの一環でお客様に寄り添う活動を行い、既存のお客様からさらにたくさんの製品を購入頂いたり、別のお客様を紹介頂いたりと、ビジネスの拡大を期待しています。
お客様は購入後のサービスで製品の価値を決めてしまう傾向がありますよね。企業努力が顧客満足に繋がるように取り組みを進めて行きたいものです。
購入側の立場に立てば、購入した製品の使い方や疑問に答えた頂くケースがあるでしょう。時には、より良い活用方法なども情報提供してもらえる可能性があるのもとても良い点ですね。
このように、既存のお客様との長い付き合いができる関係を構築する事が企業にとってとても重要になってきているのではないでしょうか。
製造メーカは作る側、お客様は使う側で、お互い立場は随分と異なってきます。だからこそ利用者の「生の声」をあらゆる側面から収集し、360度お客様理解を進め、新たな課題に気付き、そこから新たなビジネスの創出につなげることができるのではないでしょうか。
これからのデジタルトランスフォーメーションを考える中で、製品情報を管理するPLMとお客様情報を管理するCRMの「情報」をしっかり連携させて、カスタマサクセスの向上を達成していきましょう。
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製造業では、PLMやERPは多く導入が進んでいるのではないでしょうか。CRMもまた、昨今のデジタルマーケティングの導入が加速しています。
企業はそれぞれの要件でしくみの構築をしてきましたが、蓄積された情報をもっと連携すればこれまでと違う新たな課題や気付きがあるとは思いませんか?
B2Bにおけるお客様からのお問い合わせでは、技術的な内容を多く含んでいることがあります。営業は常に高いフィジビリティで提案を行い、早期に見積提示を行いたいものです。
CRMに表示される情報は購入履歴や、顧客での製品稼働情報に加え、既存製品のバージョンアップ情報や、新技術適用の情報、他社での取り組み実績等があります。主に技術側で保持している情報をフロントに共有することで、商談の品質向上やスピードアップ、他社競合優位に働くのではないでしょうか。
PLMで持っている情報の内、お客様からの直接の声と紐付く情報はないでしょうか。基本的には、製品の企画・生産・販売・廃棄まで、製品のライフサイクル全体を通して技術情報を相互に関連付けながら管理しています。
特に企画に係る情報や、販売に係る情報は、お客様の声と非常に近いところにありますね。お客様の声を基に、製品企画がされたものがどのように生産され、販売されたか?その効果はどの程度のものであったのか?トラッキングの結果をCRM上に表し、さらに次の企画、販売に活用していくことが重要だと思います。
さて、肝心の売り物ですが、製造業では多種多様の製品を扱っています。しかも国内に限らず、グローバル対応製品を含めればとてつもない数の製品が存在しているのではないでしょうか。
今、製品の情報をひとつに集め、管理が進めば、さらなるプロモーションの推進が可能となり、販売拡大に大きく貢献するとは思いませんか。
また、ある製品群をプロモーションしようとした時に、必要な情報が集まらないことはありませんか?社内にはあるが、形式が違う、部門ごとに管理している為、情報を集める事すらできないなんて話をよく耳にします。
製品の情報を一元管理するソリューションは既に多くの企業で採用が進んでいます。プロモーションの際に、各チャネルへの情報展開がスピーディーかつ品質向上が見込まれる為、カタログ情報提供やECサイトでの販売にも大きく貢献できます。
お客様は購入した製品を上手に使いたいという気持ちで、コメントを発信しています。CRMではこれらの情報を基に、個別のお客様対応をし、次の製品のプロモーション活動へ繋げています。
しかし、お客様のコメントを設計開発メンバーへ共有する仕組み、または、共有し何らか対応した結果をお客様に伝えるしくみを積極的に取り組めていないのが現状ではないでしょうか。
本来であれば、対応した内容がどの程度の影響があったかを分析し、他の製品にも展開をしていくべきなのではないかと思います。
お客様の声を開発の上流にまで共有し、さらにフィードバックし、その影響を分析することこそが本来のニーズを理解する取り組みではないでしょうか。
技術メンバーと営業メンバーは大きく役割が異なってきます。その為、取り扱う情報にも違いが出てくるわけです。しかし、常にお客様と接する営業メンバーは、お客様より技術的な質問を受けることも多く、また、新しい取り組みをするための相談を受けることもあります。
お客様への情報提供に技術情報は欠かせないものとなってきており、いかに正確な情報をフロントの営業が持っていて、迅速にお客様に伝達することができるかが、ビジネス拡大のカギとなるのではないでしょうか。
各部門で顕在化されているビジネス課題に、技術部門と営業部門間の情報連携の議案があれば、デジタルトランスフォーメンションで解決していきましょう。
これまでもPLMの情報がCRM上で表現されていますか?実現できていなければビジネスの損失に繋がるのではないかと解説してきました。
製造に関わる情報はいかがでしょうか。営業がお客様と商談している際に、工場のしかるべき担当者に確認を行う必要が出てくるケースが多いのではないかと思います。
お客様からはカスタム開発の依頼もでてくるでしょうし、他社での実績を基に提案できるカスタムも多く存在するのではないかと感じます。実際の現場では対応ができているのでしょうか。
また、工場側の立場に立てば、社内で案件情報がきちんと管理されているにもかかわらず、生産計画との連携が進んでいないことから、効率的な運用ができていないケースが多く見受けられます。
お客様情報と案件情報が生産計画と密に連携できれば、商談確度が高まった際に、先々の生産計画の見直し対応が進みます。そして、より効率的な工場稼働が実現できるのではないでしょうか。
これまで、PLMとCRM連携の重要性について具体例を挙げながら解説してきました。企業における顧客接点改革のポイント(価値)が、皆さんのこれからの取り組みに役立ちますでしょうか。企業が目指す顧客との接点のあり方は、今後もさらに多様化してくるでしょう。
従来の「情報」の活用方法から、近未来の「理想となる情報循環」を創造し、新たな価値を提供するためのデジタルトランスフォーメーションを検討されてはいかがでしょうか。
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