コンタクトセンターにおけるチャネルも、技術の進歩によって多様化してきています。 そこで今、注目されているのが「オムニチャネル」です。そもそもオムニチャネルとは何なのか、オムニチャネルによって何が改善し、どういった利益がもたらされるのか、ということについてお話していきたいと思います。
目次
オムニチャネル(Omni-Channel Retailing)とは、店舗やスマホアプリ、ECサイトやSNSなど、顧客とのあらゆる接点(チャネル)において活用されます。各チャネルの違いを意識せずに商品を購入したりサービスを受けたりできるようにすることで、顧客にアプローチするマーケティング手法です。オムニチャネルのオムニは、もとはラテン語で、「すべて」という意味を持ちます。
例えば、ある顧客が実店舗で気に入った商品を見つけたが、自身に合うサイズの在庫がお店になかったケースで考えてみましょう。その際、再入荷まで待つ、といった選択肢をとるのではなく、その場で店員が手持ちの端末からお店のオンラインショップにアクセスし、在庫を探します。商品が見つかったので、顧客はその場で支払いを済ませ、後日家に商品が届くことになりました。もしかすると販売の機会損失につながったかもしれない場面ですが、顧客のニーズにリアルタイムで対応できたことで解決することができました。それだけでなく、顧客体験の向上にもつながる事例になりました。
このように、実店舗のお店という1つの経路でなく、この場合ではオンラインショップという複数の経路を用いて、顧客満足度の高いサービスを提供する、こういった販売戦略が「オムニチャネル」です。
オムニチャネルの場合、複数のチャネル同士が連携しあうため、1つのチャネルで得たデータを他のすべてのチャネルに共有できます。データの母数が増えやすいため、より精度の高い分析が可能になり、商品やサービスのマーケティング活動に大きく役立つでしょう。
また、正確な顧客情報に基づいた正確な分析ができていれば、顧客ひとりひとりに適した個別のアプローチがとれます。結果、顧客が最後までサービスを利用したり、商品を購入したりすることに繋がり、機会損失を減らせます。 このように、オムニチャネルには無視できない複数のメリットがあります。
オムニチャネルとよく似た言葉に、マルチチャネルというものがあります。マルチチャネルは、オムニチャネルの一つ前の段階だと考えるとイメージしやすいと思います。
実店舗とスマホアプリといった複数の販売経路を用意することで、お客様が求める情報や商品が得られる状況です。ほかにも、ECサイトや、テレビコマーシャルなど、様々なチャネルを使ってアプローチしていきます。
ただし、マルチチャネルの場合、これらのチャネルは独立しており、連携が取れていない状態です。オムニチャネルの場合はそこからさらに発展し、各チャネルを統合的に連携させて管理しているため、どのチャネルからの利用であっても、顧客ひとりひとりに最適なサービスを一貫して提供することができるようになっています。
O2Oとは「Online to Offline」の略称で、オンラインとオフラインを連携させて購買活動を促進させるためのマーケティング手法です。元々は、実店舗で商品を探し、ネットで安く購入する「ショールーミング」対策として広まったもので、今では新規顧客獲得の手法としてよく用いられています。
Webサイト上で、店頭で使える割引クーポンを配信するといったことが例として挙げられます。スマートフォンが普及した現代では、GPSを利用して現在地周辺の店舗情報もすぐに調べることができるため、クーポンとの親和性が高く、時流に沿った販売戦略であると言えるでしょう。
ただし、クーポンなどのイベントがなければサービスを利用したり、商品を購入したりしないというケースがあります。つまり、長期的な利益をもたらすリピーター層の集客には向いていないという弱点もあります。
O2Oは実店舗という特定のチャネルへと顧客を誘導する手法なので、オムニチャネルとは違った概念となります。
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コンタクトセンターは、企業と顧客との接点の中でも重要な部門です。ここでの対応は、企業イメージの良し悪しにも繋がりやすいです。そのコンタクトセンターにおいて、顧客満足度を最大化するために必要なのがオムニチャネル化です。
コンタクトセンターにおいて一般的とされる電話対応だけでなく、FAX・メール・チャット・Webサイトなど、あらゆるチャネルを活用して顧客をサポートしていく必要があります。
例えば、FAXやメール、チャットで問い合わせが来たとします。通常ベストエフォートで対応したりチャットボットで対応したりするケースが多いと思います。しかしその中に、早急に対応すべきであると判断される要件があった場合、電話サポート対応に切り替える、といった対応をとることで、顧客の持つ問題の早期解決が可能です。また、複数のチャネルを統合しているため、情報の一元管理ができるようになることも大きなメリットです。
このように、昨今のコンタクトセンターにおいて、顧客の満足度を最大化し、適切なサポートを行うためには、オムニチャネル化は避けては通れないと言っても良いでしょう。
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オムニチャネルを実現するために、昨今は様々な企業で積極的にコンタクトセンターシステムの導入が行われています。 ここでは、オムニチャネル化に必要システムの代表として、「IVR」と「CTI」について説明していきます。
IVRとは「Interactive Voice Response」の略で、自動音声応答装置やシステムのことです。
IVRについての詳しい説明はこちら https://crm.dentsusoken.com/blog/cc-vol18/
一般的なコンタクトセンターでは、実際のオペレーターが行っていた応対業務の一部を置き換えるケースや、お客様の用件を適切なオペレーターに振り分けるためなどに使用されています。
一般的なIVRでは、流れてきた音声ガイダンスに従ってプッシュボタンでメニュー番号を選択入力します。すると、その番号に従ってさらに音声ガイダンスが流れ、またプッシュボタンでメニュー番号を入力する、といった流れになります。(階層はコンタクトセンターによって異なります。)
コンタクトセンターは、慢性的なオペレーター不足という問題を抱えている業界でもあります。ひとりひとりにかかる作業負担を軽減し、オペレーターという貴重な人的資源を効率的に活用できるという点でも、IVRの導入はオムニチャネル化にむけて効果を発揮するシステムです。
CTIとは「Computer Telephony Integration」の略称で、コンピュータシステムと電話系装置を統合し、コンタクトセンターの情報機能を効率化するシステムです。
例えば、問い合わせのあった電話番号をもとに、取引内容や過去のやり取りといった顧客の情報を画面上に表示することができます。それらを見ながら電話の対応ができるので、オペレーターがスムーズに問い合わせに対応することができます。
AIはさまざまな場面での活用をされ始めています。オムニチャネル化をしたコンタクトセンターではAIを活用することで、顧客サービスの向上や効率化に大いに寄与できます。以下にその主な活用方法をいくつか簡単に説明します。
AIをベースにしたチャットボットは、顧客からの質問に自動的に答えることで、24時間365日のサービス提供が可能になります。電話にて問い合わせを受ける際の待ち時間なども軽減され、顧客体験の向上につながります。
これは、人間の言語を理解して意図を識別するAIの一部です。NLPを使用すると、チャットボットは顧客からのフリーテキストの入力または音声入力を解読し、適切な応答を行うことができます。
音声認識を活用したAIは、顧客の声をテキストに変換し、理解することが可能です。また音声合成を通じて顧客に合成音声で対応することも可能です。これにより、電話や音声アシスタントを介した自動化された顧客サービスが提供できます。
AIはまた、コールセンターでの顧客との会話を分析して感情を把握することも可能です。これにより、顧客の満足度が現在よりも正確に把握され、さらなるサービス向上に役立ちます。
AIは大量の顧客通信データを分析しそのパターンを判明し、顧客の問題を予測し改善策を提案することが可能です。 自動でレポートとして必要な情報を一覧にまとめて確認することができるので、状況を把握したり改善策を考えるために役立ちます。これらの方法を通じて、AIはコンタクトセンターでの作業負荷を軽減し、迅速で正確な顧客サービスを提供するのに役立ちます。
このように、これからのコンタクトセンターにおいて、オムニチャネル化は顧客満足度を最大化するために非常に重要な要素となってくると考えられています。
お客様の電話の声をテキスト化し、それすらも顧客情報として活用していく、というAIを活用した新たな試みも進んでいます。限られたオペレーター、コンタクトセンターの資源を使って、お客様の不満を最大限に解消し、CX(顧客体験)を向上させ、さらには売上を向上させる効果につなげることができます。
電通総研では、オムニチャネルを活用したコンタクトセンターなど豊富なコンタクトセンター構築のノウハウを有しておりますので、是非ご相談ください。
コールセンター/コンタクトセンターのマルチチャネルに関しては以下の記事もご覧ください。 「コンタクトセンターとコールセンターの違いとは?オムニチャネル対応から見える将来像(Vol.15)」 「コンタクトセンターにおけるオムニチャネルの重要性 マルチチャネルとO2Oの違いも解説(Vol.24)」
当サイトでは、コールセンター/コンタクトセンターの作り方や、最新のIT活用を学びたい方へ、ダウンロード資料を多数ご用意しております。ぜひダウンロードいただき、資料をご活用ください。
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