現代のマーケティングにおいて、顧客体験の一貫性と最適化が重要です。そのための基盤となるのが「カスタマージャーニー設計」です。カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、関与し、購入・利用するまでの一連のプロセスを指します。この一連の流れを可視化し、顧客の期待に応える形で最適化することが、競争の激しい市場で差別化を図る方法となります。
本記事では、カスタマージャーニーの基本から設計の手順、データを活用した設計方法、そして具体的な活用事例を解説します。金融業界を含む幅広い分野で役立つ視点をお届けします。
目次
※AIDMAモデル AIDMAは、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の5つのステップで構成される購買心理モデルです。
※AISASモデル デジタル時代の購買行動を反映したモデルで、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」から構成されます。
カスタマージャーニーは一般的に以下のフェーズに分けられます。 【図1】カスタマージャーニーのフェーズ
カスタマージャーニーを設計するうえで、顧客の行動や心理を正確に把握することが成功の鍵です。しかし、感覚や推測だけでは、顧客の多様なニーズや行動を正確に捉えることは難しいと思われます。そこで、データを活用してジャーニーをマッピングし、具体的かつ柔軟な設計を行うことが重要です。データドリブンなアプローチにより、ジャーニー内の各フェーズで顧客が直面する課題を明確にし、的確な施策を講じることが可能になります。たとえば、住宅ローンを検討している顧客の場合、ウェブサイトの訪問履歴や検索キーワードの分析から「比較検討段階」にいることがわかれば、このフェーズに特化したローンシミュレーションツールやレビュー情報を提供することで購買意欲を高めることができます。
以下のような4つのステップで進めていきます。
カスタマージャーニー設計の成功事例: 地方銀行でマイカーローンの利用促進を目的としたカスタマージャーニー設計を実施しました。銀行の顧客分析により、新車購入を検討している顧客は複数のタッチポイントを経由して決定を下す傾向があることが判明。この情報を基に、以下のような各ステージに応じた施策を展開しました。
SNS広告や地域紙の広告を活用し、「マイカーローン特別金利キャンペーン」を訴求しました。広告には「月々の支払いがラクになる簡単シミュレーション付き」といったキャッチコピーを掲載し、ターゲット層の注意を引く工夫を施しました。
広告から専用のランディングページ(LP)に誘導。LPには、簡易なローンシミュレーションツールを設置し、見積もり結果をメールで保存できる仕組みを導入しました。また、購入者の口コミや利用事例を掲載し、ローンの安心感を高めました。さらに、車種ごとの支払い例を具体的に提示することで、検討段階の顧客に具体的なメリットを伝えました。
シミュレーションを利用した顧客には、最寄りの店舗やオンライン相談窓口への案内メールを送信。また、オンライン相談では、顧客が購入予定の車種に基づいた個別のローンプランを提案しました。必要書類の準備や申請方法も詳細に説明し、購入プロセスをスムーズに進めることを重視しました。
ローン契約後、月々の支払いをサポートするアプリの利用を案内。さらに、半年後には「車検時の特別サポートローン」や「次回購入時の下取りローン」の案内を送るなど、継続的な関係構築を図りました。
このジャーニー設計の結果、キャンペーン期間中のマイカーローン申し込み数は大きく増加しました。特に、簡易シミュレーションツールを経由した顧客の申し込み率が顕著でした。オンライン相談予約率も大幅に向上し、顧客満足度調査では「情報提供がわかりやすかった」との回答が大多数を占める成果を収めました。
ジャーニー設計の成功ポイントは以下の通りとなります。
・顧客視点に立った設計: マイカーローンに特化し、車購入を検討する顧客の具体的なニーズを反映した施策を展開しました。
・データ分析と施策の最適化: 広告クリック率やシミュレーション利用率をモニタリングし、最も効果の高いタッチポイントを強化しました。
・シームレスな体験提供: オンラインから店舗まで、顧客がどのチャネルを選んでも一貫性のある情報を提供し、購入意欲を損なわない仕組みを設計しました。
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顧客体験を最適化するカスタマージャーニー設計とは、と題してその基本的な概念からデータを活用した設計方法、具体的な成功事例について説明をしてまいりました。ジャーニー設計は、顧客体験を最適化し、マーケティング施策を成功へと導くための重要なフレームワークです。現代の顧客は、商品やサービスを認知し、検討し、購入に至るまで、多様なタッチポイントを経由します。その中で、いかに一貫性のある情報を提供し、顧客の心理や行動に寄り添った体験を作り上げられるかが競争力の鍵となります。ジャーニー設計を通じて、顧客の期待に応えるだけでなく、期待を超えるサービスを提供することが、長期的な信頼関係の構築につながります。
今回紹介したマイカーローンの事例のように、データを基に各フェーズで顧客のニーズを的確に捉えた施策を実行することで、成果を飛躍的に向上させることが可能です。また、顧客ニーズや市場環境は常に変化していくため、ジャーニー設計を一度作って終わりにするのではなく、継続的に見直し改善していくことも重要です。
この機会に、貴社のマーケティング施策にカスタマージャーニー設計を取り入れ、顧客体験の向上を目指してみませんか?
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