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顧客体験を最適化するジャーニー設計とは(Vol.95)

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現代のマーケティングにおいて、顧客体験の一貫性と最適化が重要です。そのための基盤となるのが「カスタマージャーニー設計」です。カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、関与し、購入・利用するまでの一連のプロセスを指します。この一連の流れを可視化し、顧客の期待に応える形で最適化することが、競争の激しい市場で差別化を図る方法となります。

本記事では、カスタマージャーニーの基本から設計の手順、データを活用した設計方法、そして具体的な活用事例を解説します。金融業界を含む幅広い分野で役立つ視点をお届けします。

カスタマージャーニーの基本

  • なぜカスタマージャーニー設計が必要なのか?
    現代の消費者は、商品の認知から購入、さらにはアフターケアに至るまで、多数のタッチポイントを経由しながら購買プロセスを進めます。この複雑な経路を把握し、適切なタイミングで適切な情報を提供することが重要です。たとえば、住宅ローンを検討する顧客がいた場合、銀行のウェブサイト、比較サイト、オンライン相談、店舗訪問といった異なるタッチポイントを利用します。このような旅路(ジャーニー)の中で、情報の一貫性を保ち、顧客の期待を超える体験を提供することができれば、購買意欲を引き出し、競合との差別化を図ることができます。そのため、カスタマージャーニー設計はマーケティング戦略の中心的な役割を果たします。
  • カスタマージャーニーとは何か?
    カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスに関わる一連のプロセスを「旅」に例えたものです。このジャーニーを把握することで、顧客がどのタイミングでどのような行動を取るかを理解し、適切なアプローチを設計できます。ジャーニー設計の基盤には、さまざまな購買モデルが存在します。その中でも代表的なものが「AIDMA」「AISAS」といったモデルです。カスタマージャーニーは、これらのモデルが示す購買心理に基づいて、顧客がどのフェーズにいるのかを具体的に視覚化し、それぞれに合った施策を設計するためのフレームワークといえます。

※AIDMAモデル
AIDMAは、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の5つのステップで構成される購買心理モデルです。

※AISASモデル
デジタル時代の購買行動を反映したモデルで、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」から構成されます。

 

カスタマージャーニーは一般的に以下のフェーズに分けられます。
【図1】カスタマージャーニーのフェーズ

データを活用したカスタマージャーニー設計

データがカギを握るジャーニー設計

カスタマージャーニーを設計するうえで、顧客の行動や心理を正確に把握することが成功の鍵です。しかし、感覚や推測だけでは、顧客の多様なニーズや行動を正確に捉えることは難しいと思われます。そこで、データを活用してジャーニーをマッピングし、具体的かつ柔軟な設計を行うことが重要です。データドリブンなアプローチにより、ジャーニー内の各フェーズで顧客が直面する課題を明確にし、的確な施策を講じることが可能になります。たとえば、住宅ローンを検討している顧客の場合、ウェブサイトの訪問履歴や検索キーワードの分析から「比較検討段階」にいることがわかれば、このフェーズに特化したローンシミュレーションツールやレビュー情報を提供することで購買意欲を高めることができます。

ジャーニー設計の具体的なステップ

以下のような4つのステップで進めていきます。

  1. ペルソナに基づくジャーニーマッピング
    最初のステップは、データを基に作成したペルソナを活用し、顧客がどのように商品やサービスに接触するかを具体的にマッピングすることです。ペルソナの特性を反映させることで、より現実に即したジャーニー設計が可能になります。
  2. タッチポイントの特定
    顧客が接触するポイント(タッチポイント)を洗い出し、それぞれのポイントでどのような体験を提供すべきかを考えます。ウェブサイト、メール、店舗、SNSなど、各タッチポイントの役割を明確に定義することが重要です。
  3. データ分析によるインサイトの獲得
    Salesforce Marketing Cloud EngagementやGA4(Google Analytics 4)などのツールを活用して、顧客行動を追跡・分析します。たとえば、特定のページの閲覧時間や直帰率などを分析することで、どのタッチポイントに問題があるかを特定できます。
  4. シナリオ設計と施策の実行
    各フェーズで顧客が必要とする情報やアクションを基に、具体的なシナリオを作成します。たとえば、認知フェーズでは「SNS広告」、検討フェーズでは「比較表付きのランディングページ」、購入フェーズでは「限定キャンペーン情報」といった施策が考えられます。

ジャーニー設計の実例と成功ポイント

カスタマージャーニー設計の成功事例:
地方銀行でマイカーローンの利用促進を目的としたカスタマージャーニー設計を実施しました。銀行の顧客分析により、新車購入を検討している顧客は複数のタッチポイントを経由して決定を下す傾向があることが判明。この情報を基に、以下のような各ステージに応じた施策を展開しました。

  • 認知(Awareness)フェーズ

SNS広告や地域紙の広告を活用し、「マイカーローン特別金利キャンペーン」を訴求しました。広告には「月々の支払いがラクになる簡単シミュレーション付き」といったキャッチコピーを掲載し、ターゲット層の注意を引く工夫を施しました。

  • 興味・検討(Consideration)フェーズ

広告から専用のランディングページ(LP)に誘導。LPには、簡易なローンシミュレーションツールを設置し、見積もり結果をメールで保存できる仕組みを導入しました。また、購入者の口コミや利用事例を掲載し、ローンの安心感を高めました。さらに、車種ごとの支払い例を具体的に提示することで、検討段階の顧客に具体的なメリットを伝えました。

  • 購入(Decision)フェーズ

シミュレーションを利用した顧客には、最寄りの店舗やオンライン相談窓口への案内メールを送信。また、オンライン相談では、顧客が購入予定の車種に基づいた個別のローンプランを提案しました。必要書類の準備や申請方法も詳細に説明し、購入プロセスをスムーズに進めることを重視しました。

  • アドボカシー(Retention)フェーズ

ローン契約後、月々の支払いをサポートするアプリの利用を案内。さらに、半年後には「車検時の特別サポートローン」や「次回購入時の下取りローン」の案内を送るなど、継続的な関係構築を図りました。

 

このジャーニー設計の結果、キャンペーン期間中のマイカーローン申し込み数は大きく増加しました。特に、簡易シミュレーションツールを経由した顧客の申し込み率が顕著でした。オンライン相談予約率も大幅に向上し、顧客満足度調査では「情報提供がわかりやすかった」との回答が大多数を占める成果を収めました。

 

ジャーニー設計の成功ポイントは以下の通りとなります。

・顧客視点に立った設計:
マイカーローンに特化し、車購入を検討する顧客の具体的なニーズを反映した施策を展開しました。

・データ分析と施策の最適化:
広告クリック率やシミュレーション利用率をモニタリングし、最も効果の高いタッチポイントを強化しました。

・シームレスな体験提供:
オンラインから店舗まで、顧客がどのチャネルを選んでも一貫性のある情報を提供し、購入意欲を損なわない仕組みを設計しました。

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まとめ

顧客体験を最適化するカスタマージャーニー設計とは、と題してその基本的な概念からデータを活用した設計方法、具体的な成功事例について説明をしてまいりました。ジャーニー設計は、顧客体験を最適化し、マーケティング施策を成功へと導くための重要なフレームワークです。現代の顧客は、商品やサービスを認知し、検討し、購入に至るまで、多様なタッチポイントを経由します。その中で、いかに一貫性のある情報を提供し、顧客の心理や行動に寄り添った体験を作り上げられるかが競争力の鍵となります。ジャーニー設計を通じて、顧客の期待に応えるだけでなく、期待を超えるサービスを提供することが、長期的な信頼関係の構築につながります。

今回紹介したマイカーローンの事例のように、データを基に各フェーズで顧客のニーズを的確に捉えた施策を実行することで、成果を飛躍的に向上させることが可能です。また、顧客ニーズや市場環境は常に変化していくため、ジャーニー設計を一度作って終わりにするのではなく、継続的に見直し改善していくことも重要です。

この機会に、貴社のマーケティング施策にカスタマージャーニー設計を取り入れ、顧客体験の向上を目指してみませんか?

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