マーケティングの施策を考えるうえで、データ分析は必須の作業です。データ分析の手法は多岐にわたり、施策の目的や課題、自社が持つデータの種類によって最適な手法が異なります。
この記事では、代表的なデータ分析手法を10個紹介します。データ分析の流れや活用例も解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
そもそも、マーケティングにはなぜデータ分析が必要なのでしょうか。具体的な理由を3つ説明します。
データ分析を行うと、分析結果にもとづく客観的な施策を立てられます。顧客や競合他社の動向を一定の指標に沿って分析するため、現状を適切に把握したうえで施策を考案できます。個人の勘や考え方による主観的な施策の場合、成果を出しづらくなるでしょう。また、施策の説得力も欠けるため、スムーズな意思決定もできません。データ分析によって、客観的な事実を根拠とした施策の提案や意思決定が可能になります。
マーケティング施策によって得たデータを分析することで、施策の効果検証を行えます。データ分析を行わずに「なんとなく」で施策を評価すると、想定した成果が得られているのかを正しく判断できません。さらに、施策の改善も迷走するおそれがあります。仮にリードの獲得数が減少した場合、要因がわからずやみくもに改善策の提案と実行を繰り返す状態になってしまうかもしれません。データ分析を行えば問題点を発見しやすくなり、的確に改善策を打ち立てられます。
データ分析により、自社のターゲットとなる顧客像を絞り込めます。顧客像が鮮明になるほど、ターゲットの特性に合わせたマーケティング戦略の考案が可能です。さらに、データの分析結果は「パーソナライズドマーケティング 」にも応用できます。パーソナライズドマーケティングとは、顧客ごとの購買行動や属性に応じた施策を実行する手法です。顧客像にマッチする施策を実行すれば、顧客ロイヤルティや購買意欲の向上を実現できるでしょう。
マーケティングの分析対象となるデータは、データの「特性」と「収集元」の2つに分類されます。
データの特性によって、「デモグラフィックデータ」と「トランザクションデータ」に大きく分かれます。とりわけ、デジタルマーケティングの領域で広く活用されているデータです。
デモグラフィックデータとは、人口統計で使われるような以下の情報を指します。
顧客1人ひとりの個人情報であり、自社の顧客像を知るための基本的なデータとなります。
トランザクションデータとは、顧客と自社の取引に関連するデータを意味します。取引データとも言われており、次の情報が該当します。
変化が少ないデモグラフィックデータと比べて、トランザクションデータは顧客の行動によって大きく変化します。
データの収集元によって分類する場合、データを誰が取得したのかによって3種類に分かれます。
ファーストパーティデータとは、自社が直接入手した情報です。具体的には、以下のデータが当てはまります。
ファーストパーティデータは自社が入手・保管している情報であるため、信憑性の低いデータは混入しづらいと言えます。
セカンドパーティデータとは、親会社やグループ会社、パートナー企業といった自社と関わりのある会社が収集した情報です。他社が保有しているファーストパーティデータであり、主に次の情報が共有されます。
ファーストパーティデータよりも情報にタイムラグが生じる一方で、ターゲット層の拡大や新たな施策の立案に応用できる点がメリットです。
サードパーティデータとは、自社と直接関わりがない第三者が収集した情報です。たとえば、次のデータが当てはまります。
主に市場動向の分析に活用されており、ファーストパーティデータと組み合わせることで分析の精度を高められます。ただし、第三者が提供するデータであるため、提供元の信頼性を充分に確認する必要があります。
マーケティングのデータ分析手法は、具体的にどのような場面で活躍するのでしょうか。5つの活用例を解説します。
顧客分析では、自社の顧客に関するデータを詳しく分析します。顧客の年齢・地域・性別などの属性、購買行動、商談履歴から、顧客の潜在的なニーズや新たなターゲット層を明らかにします。自社がアプローチすべきターゲット層や最適なタッチポイントがわかるため、効果的なマーケティング施策の実行が可能です。また、自社プロダクトと顧客ニーズのズレが判明すれば、既存の製品・サービスの改善点がわかります。
市場分析とは、自社の業界や競合他社の動向を研究する作業です。市場規模、技術・トレンドや経済状況による市場動向、競合の動向、顧客ニーズなど、幅広い領域を分析して競争優位性を保つためのマーケティング施策を立案します。競合と比較した場合の自社の強みや弱みがわかるため、他社との差別化に必要なマーケティング戦略を考えられます。さらに、市場の分析結果は、経営判断の根拠としても応用可能です。
売上分析では、自社の製品・サービスの売上をもとにマーケティング施策の課題や成果を正確に把握します。製品・サービス別、顧客別、チャネル別などの指標について、一定の期間ごとに売上を比較します。売上分析により、収益性の高い商材や顧客層の把握が可能です。さらに、商材ごとの売り込むべき業界や時期もわかります。マーケティング活動の優先順位付けに活用することで、リソース分配の最適化および収益の向上へつなげられます。
商圏分析とは、自社の店舗が影響する商圏の顧客層や地域の特性を分析するプロセスです。店舗の集客範囲や顧客の特徴を明らかにして、効果的な販促活動を決定します。加えて、新規出店の検討にも役立ちます。潜在的なターゲット層が多い地域の特定、競合他社の立地や商品構成、交通アクセスといった情報をもとに、新規出店エリアの絞り込みが可能です。既存店舗の場合、商圏内の将来的な人口動態やニーズから、規模の拡大または撤退を検討します。
アンケート分析を実施すると、アンケートの回答内容から顧客の不満や要望、潜在ニーズを把握できます。アンケート分析は、次の3つの方法で行います。
こうしたアンケートの集計結果は、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上を目指す施策に活用できます。また、顧客のニーズがわかるため、新たな製品やサービスの開発にも貢献します。
マーケティングのデータ分析手法は、数多くの種類があります。ここでは、代表的な10個のデータ分析手法を紹介します。
クロス集計とは、異なる情報を掛け合わせて分析する手法です。データ同士の関連性を見つけられるため、アンケート分析で多く利用されています。よくある例が、「質問の項目」と「回答者の年齢・性別」を掛け合わせるパターンです。クロス集計によって、「20代男性は質問Aにaと答える人が多い」「質問Aにaと答えた人は質問Bでbと回答する人が多い」など、情報の相関関係を解析できます。
アソシエーション分析とは、データのパターンや関連性を明らかにする手法です。購買データやPOSデータ同士を分析して、「商品Aを買う人は商品Bも同時に購入する」といった商品同士の関連性を発見します。店舗やECサイトにおける商品配置や広告デザインへの活用が可能です。なお、アソシエーション分析は小売業だけでなく、検索ワードや閲覧サイトの分析にも使用されています。購買行動に特化して分析する場合、バスケット分析と呼びます。
RFM分析とは、次の3つの指標で顧客を分類する手法です。
たとえば、R・F・Mのいずれも高い顧客は「優良顧客」に分類できます。また、F・Mは高くともRが低い場合、競合他社へと流れつつある「離反顧客」と考えられるでしょう。RFM分析を行うことで、顧客のグループごとに異なる施策を実行できます。
デシル分析とは、累計購入金額をもとに顧客を10グループに分ける手法です。各グループの売上構成比や購入比率を比較して、売上貢献度が高いグループを割り出します。優良顧客が多いグループが可視化されるため、積極的にアプローチすべきターゲット層を把握できます。労力や予算を割く優先対象がわかることから、費用対効果の高いプロモーション活動を行えるでしょう。1つの指標しか使わないため、比較的簡単に取り組める手法です。
ロジスティック回帰分析とは、複数の要因から2値の結果が起きる確率を分析する手法です。2値の結果とは、サブスクリプションの「継続」または「解約」のように2択で表せる値を指します。サブスクリプションの例で言えば、ユーザーの性別や年齢、サービスの利用状況から解約する確率を分析します。ロジスティック回帰分析は「多変量解析 」の一種です。多変量解析とは、複数の変数(データ)の関係を分析して、データを分類・要約・予測する手法の総称です。
重回帰分析とは、1つの成果(目的変数)と複数要因(説明変数)の関係性を分析する手法です。多変量解析の一種であり、売上予測や予算配分に向いている分析方法です。たとえば、商圏分析では、新規出店する際の売上予測(目的変数)の算出に重回帰分析を行います。既存店舗の立地、商品数、商圏内の人口、商圏内の競合店舗といった複数要因(説明変数)を数値化して、売上への影響を分析します。次に説明変数を新規店舗の数値に置き換えると、新規出店後の売上予測が可能です。
クラスター分析は多変量解析に含まれ、対象データの中から類似するデータ集団を分類する手法です。個人、企業、商圏、商品・サービス、購買行動、アンケートの回答結果など、さまざまなデータを特性に沿って分類します。したがって、顧客分析や商圏分析、市場分析といった多様な分析に活用可能です。膨大なデータを複数のグループに分けることで、各グループの特徴を捉えたマーケティング施策を効率的に展開できます。
決定木分析(ディシジョンツリー)とは、樹形図によってデータを分類する手法です。1つの事象(目的変数)からツリーを枝分かれさせて、どのような要素(説明変数)で成果が構成されているのかを判別します。たとえば、「顧客ロイヤルティが高いユーザーはどのような属性があるのか」「商品・サービスの潜在顧客はどのような人なのか」といった活用が可能です。顧客ロイヤルティを上げる要因や潜在顧客の特徴をとらえたいケースに向いています。
セグメンテーション分析とは、市場に存在する不特定多数の消費者を特定の属性やニーズによって分類する手法です。特定の消費者のニーズを把握できるため、市場全体を漫然と狙うのではなく自社が集中して狙うべきターゲット層を明確にできます。また、商品・サービスの新規開発や改善にも役立ちます。なお、セグメンテーション分析は、市場分析のフレームワーク「STP分析」の一種です。STP分析の詳細は後述します。
ファネル分析とは、顧客の行動から、コンバージョンに至らなかった離脱ポイントや要因を分析する手法です。コンバージョンの設定は商材や施策によって異なり、「商品の購入」「サービスの契約」「資料請求」「会員登録」と多岐にわたります。コンバージョンに至るまでの各プロセスの離脱要因を明らかにすることで、離脱率を下げるための施策を考案できます。ファネル分析は多くのビジネスで使われており、中でもBtoBマーケティングの分析に活用しやすい分析方法です。
ここまでマーケティングのデータ分析手法を紹介しましたが、マーケティング施策には「フレームワーク」も併用するケースが一般的です。 フレームワークとは「何をどう整理しながら分析するか」といった思考の枠組みのことを指します。枠組みとしてのフレームワークがあったうえで、「具体的にどう分析するか」という部分は別途「分析手法」と呼び、状況に応じて最適な手法を選択することが一般的です。
それでは、以下で代表的な4つのフレームワークを紹介します。
STP分析とは、マーケティング戦略を考えるフレームワークです。はじめに「Segmentation(セグメンテーション)」で、市場を特定の要素で細分化します。次の「Targeting(ターゲティング)」は、細分化した市場から狙うべき対象を決める工程です。最後に「Positioning(ポジショニング)」により競合他社との差別化や自社の立ち位置を定めることで、マーケティングの方向性を明確にできます。
SWOT分析(クロスSWOT)とは、自社の内部要因を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」、外部要因を「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」として合計4つの要素で分析するフレームワークです。自社の環境をプラス・マイナスの両面から分析して、現状を正しく把握してマーケティング戦略の立案に活用します。
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの観点によって自社のマーケティング環境を把握するフレームワークです。自社を取り巻く要素を抜け漏れなく認識することで、市場における自社の優位性やポジションを確認できます。商品・サービスの改善点やリーチすべき顧客層がわかり、効果的なマーケティング施策の立案が可能です。
4P分析とは、自社の商品やサービスについて、「Product(製品・サービス)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販促活動)」の4つの観点で解析するフレームワークです。4P分析を行うと、自社商材のアピールポイントや訴求対象となるターゲット層の特性への理解を深められます。また、どのような販促活動で顧客へアプローチするのかについても分析できます。
▼マーケティングで活用するフレームワークについては、こちらで詳しく解説しています。
マーケティング分析のフレームワークを活用シーンごとに解説!環境分析・顧客分析・戦略策定に適した種類とは(Vol.116)
マーケティングにデータ分析を活用する際は、次の5つの手順で進めましょう。
はじめに、データ分析によって達成したい目的を決めます。「Web経由のリード獲得数を◯◯%増やしたい」「サービスの解約率を◯◯%減らしたい」など、具体的な目的を決定しましょう。そのうえで、目的達成のために現状のマーケティング施策で解決すべき課題を明確にします。サービス解約率の抑制が目的であれば、「顧客満足度が低下傾向にある」が課題の一例となります。 <h 3>2.仮説の構築</h3> 続いて、課題の要因となる仮説を立てます。前項の課題例「顧客満足度が低下傾向にある」の場合、「サービスの説明文が過剰で顧客の期待値が高すぎるのではないか」と仮説を設定します。仮説を設けると検証に必要なデータのみ収集すれば良いため、効率的な分析が可能です。なお、仮説の構築はデータ分析の効率化を目的としているため、仮説自体の真偽は重要ではありません。
仮説の構築後、必要なデータを集めます。デモグラフィックデータやファーストパーティデータなど、仮説の検証に必要なデータを絞り込みましょう。前項の仮説例「サービスの説明文が過剰で顧客の期待値が高すぎる」であれば、説明文の変更前後のNPSやアンケートの回答結果、説明文を変更する前の加入者の解約率、変更後の加入者の解約率が必須のデータとなります。
データを分析する前に、「説明文の変更後の加入者のほうがNPSの数値が低い」のように仮説に合わせて結果を想定しましょう。その後、データを分析して仮説を検証します。仮説や想定結果とデータの分析結果が違った場合、新たに仮説を立てて再検証しましょう。仮説とデータの分析結果が合致するまで、仮説の構築と検証を繰り返します。
仮説を実証できたら、データの分析結果をマーケティング施策へ適用します。例として「説明文の変更後の加入者のほうがNPSが低い」と分析結果で実証された場合、実際にサービスの説明文を変更します。データ分析により実行したマーケティング施策の成果も検証して、適切な改善策であるかを確認します。想定した結果を得られなかった場合、結果に対して再び仮説を立ててデータ分析を行い改善策を立てましょう。
マーケティングのデータ分析で成果を出すためには、以下3つのポイントが大切です。
やみくもにデータを分析するのではなく、仮説にもとづいてデータ分析を進めましょう。仮説があれば収集するデータを絞り込めるため、不要なデータを集める無駄な作業が発生しません。また、総当たり的にデータ分析を実行しないことから、無意味なプロセスに時間や予算を割くリスクも抑えられます。作業の効率化に加えてリソースの浪費も避けられるため、データ分析には仮説思考が不可欠です。
データ分析の目的は必ず決めましょう。目的が定まっていないと、最適な課題や仮説を設定できません。結果的に、収集するべきデータや適切な分析手法がわからず、無意味なデータ分析を繰り返す可能性が高まります。データ分析は、最適なマーケティング施策を実行するために行う作業です。データ分析自体を目的化せず、あくまでマーケティング施策の一環として明確な目的を設定しましょう。
データ分析は、改善の積み重ねを前提として行いましょう。一度のデータ分析で仮説通りになったり、マーケティング施策を成功させたりできるわけではありません。また、マーケティング施策に上手く分析結果を活かせない場合もあるでしょう。試行錯誤を繰り返すことで分析の精度が高まっていくため、データ分析に継続的に取り組める体制も重要です。
マーケティングのデータ分析には、ツールの活用が欠かせません。データ分析におすすめのツールは、次の3つです。
アクセス解析ツールとは、自社のWebサイトに訪問したユーザーの行動を記録するツールです。Webマーケティングの基盤となるツールであり、多くのWebサイトに導入されています。アクセス解析ツールを利用すると、流入経路、アクセス数、滞在時間、離脱ページ、コンバージョン数、ユーザーの利用端末といった多くの情報を取得できます。Webサイト上のユーザーの行動を分析することで、サイト設計やコンテンツの改善が可能です。
MA(マーケティングオートメーション)とは、マーケティング活動を効率化するためのツールです。データ分析の自動化、リードごとのカスタマージャーニーの管理、興味関心にもとづいたメールの配信など、多彩な機能が搭載されています。顧客1人ひとりに施策を最適化する「One to One マーケティング(パーソナライズドマーケティング)」を実現したい場合、導入の優先度が高いツールと言えます。
CDP(顧客データプラットフォーム)とは、企業が保有する顧客データを統合管理・分析するプラットフォームです。MAやデータベースなどの異なるシステムで管理している顧客データを集約して、氏名や性別などの個人情報や行動データを顧客ごとのIDに紐付けます。MAと同様に顧客1人ひとりのデータ分析が可能になり、より的確なマーケティング施策を実行できます。
▼MAやCDPなどのデータ分析ツールの導入にご興味のある方はこちらをご覧ください。 https://crm.dentsusoken.com/digital-marketing/
マーケティングの施策を客観的に立案するためには、データ分析が必要です。データ分析を行う際は、仮説の設定と検証を繰り返しましょう。仮説を実証できてからマーケティング施策に組み込むことで、効果の高い施策を実行しやすくなります。また、MAやCDPなどのツールを使うと、データ分析の効率化が可能です。顧客の属性や行動に合わせたマーケティング施策の考案にも役立つため、ツールの活用がおすすめです。
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