政府がDX化を推進している現在、マーケティングDXも企業で続々と導入が進む傾向にあります。顧客との接点も対面から非対面へと変化しており、デジタルマーケティングの重要性が増しています。
この記事ではマーケティングDXとはどのようなものなのか、企業や顧客にどんな効果をもたらすのか、注意したいポイントやマーケティングDXを導入して成功した企業の事例もまじえて解説します。目次の一覧も参考に、情報をチェックしてみてください。
目次
マーケティングDXとは、ITツールやAIなどの最新のデジタル技術を駆使して、顧客体験やマーケティング業務に変革をもたらす取り組みです。近年、世界でもベンチャー企業による既存ビジネスから新たな市場の創出や世界的パンデミックの影響による顧客行動の多様化が顕著になっています。
急激に変化する市場の中で日本国内でも、国際競争力や機敏性を十分に持つマーケティングが求められています。しかし、日本ではさまざまな要因からマーケティングDXの導入の遅れが指摘されているのが実状です。ビジネスの分野での遅れは経済的損失にもつながる恐れがあるため、早期、かつ効率的な導入が課題と言えるでしょう。
DXとはDigital Trasformation(デジタルトランス フォーメーション)の略で「デジタル変革」という意味です。ビジネスの分野に限らず、情報通信技術などを通して国民生活全体を快適にするという概念です。経済産業省 ではDXを以下のように定義づけています。
・デジタル技術やツールを導入すること自体ではなく、データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと ・そのためにビジネスモデルや企業文化等の変革に取り組むことが重要となる”(※1)
つまり企業においてのDXとは、最新のツールを導入するだけにとどまらず、既存の価値観を刷新するような企業文化・風土の醸成、業務プロセスの変革などが必要なのです。
※1 引用:経済産業省「デジタルカバナンス・コード 実践の手引き」 https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chushoguidebook/tebiki-yoyaku.pdf
マーケティングDXと混同しやすい言葉のひとつにデジタルマーケティングがあります。マーケティングDXとは、デジタル技術や収集データを駆使することにより、マーケティングプロセスの本質的な変革を図ることです。一方でデジタルマーケティングは、デジタル技術を取り入れたマーケティング施策のひとつです。
例えばWebサイトやメール、SNSなどを使ったプロモーションや広告やアプリ、オウンドメディア、実店舗に対する顧客行動のデータ収集・分析などの手法が該当します。デジタルデータに基づいたマーケティング活動です。マーケティングDXを推し進めるための効果的な手段と言えるでしょう。
マーケティングDXには他社と差別化ができる革新的なサービスの創出や顧客体験の向上など、企業と顧客双方にとって非常に多くの利益がある施策です。企業価値も高まることから早期に導入したいところですが、安易には導入に踏み切れない課題が多々あります。ここでは企業が抱えるマーケティングDXの導入に関する課題について詳しく解説します。
マーケティングDXを導入して運用後も円滑に業務を進めるためにはDX人材の確保が必要ですが、なかなか適した人材がいない企業が多い傾向にあります。ITツールを使いこなす技術力とマーケティングトレンドに関する知見を持っていなければなりません。
また、マーケティングDXは組織改革という目的があるため、社内外の意識を変えて改善に向けて行動できる推進力やマネジメント能力も求められます。こうした資質を持つ人材が社内にいない場合、マーケティングDXが計画通りに進まず、停滞してしまう可能性があります。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構が発表した「中小企業のDX推進に関する調査(2024年) 」(※2)によると、全国の中小企業のなかでDX推進における人材について「不足している」または「非常に不足している」と回答した会社は、全体の45.2%に及んでいます。導入を検討している企業は、人材育成と採用活動の両面において対策が必要です。
※2 出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」 https://www.smrj.go.jp/research_case/questionnaire/fbrion0000002pjw-att/202412_DX_report.pdf
マーケティングDXは会社全体が統一した意識を持って実施していく必要があります。日本では現場の声や意見を上層部にあげ、トップが改善に向けて指示を出すボトムアップ型スタイルが多いといわれています。自社に合ったシステムやソリューションの導入、また改善方法などは顧客により近い現場のほうが理解できているのが理由のひとつです。
しかし、ボトムアップ型の場合、上層部に意見が届くまでに時間がかかり、結果的に意思決定に遅れが生じてしまいます。スピードが求められるマーケティング部門では、致命的な損失につながる可能性が否めません。現場の意見やアイデアが反映される仕組みを取り入れつつ、スピーディーに意思決定ができる体制が望ましいといえます。
企業の形態や業種によっては「DX化は不要」という考えが浸透している場合があります。特に既存の業務体制やプロセスで十分に成功している企業では、理解が得られにくいかもしれません。新たな習慣を取り入れることに苦手意識を持つ従業員もいるでしょう。
マーケティングDXは、デジタルツールやデータの活用だけにとどまらず、社内の業務体制全体の変革を伴うため、社内全体の理解が不可欠といえます。単なる体制の変更ではなく、ビジネスモデルをアップデートする取り組みだという認識に統一することが大切です。社内では解決が難しい場合は、外部からコンサルタントを招いてデジタルリテラシーの向上に努めるなどの対応が必要です。
業務の構造を刷新することで、売上が減少するリスクがある場合、マーケティングDXの流れが停滞する可能性があります。企業全体の利益になったとしても、一定の部門やエリア、取引先にとってはマイナスに転じるケースがあるでしょう。
例えばDX化でオンラインショップやアプリ経由での顧客増加が見込めても、実店舗や代理店の売上が減少するなどの影響が懸念されます。このようなリスクや影響が起こりやすい企業では関係部署と慎重に調整しながら対応していくことが重要です。売上評価基準の見直しなども視野に入れておきましょう。
マーケティングDXではさまざまな最新ツールの導入が不可欠であり、データの移行などに手間がかかることもあります。導入する際の一時的なものですが、担当部署の従業員の負担が増えてしまうかもしれません。負担が最小限にとどめられるよう、既存のシステムから移行しやすいソリューションを選びましょう。
マーケティングDXは企業が一丸となり進めていくのが理想的です。ここでは、マーケティングDX導入の際に、経営者層、管理職も含め社内全体で知っておきたいポイントを解説します。
マーケティングDXにかかるコストは、導入する規模やシステム、ソリューションによって当然異なります。しかし、一度にすべてのシステム環境を変えると、多くのコストがかかります。そのためスモールスタートで導入するのが一般的です。
最初はコストを抑えるために、業務を行う上で課題となっている部門に限定して最適なツールを取り入れるとよいでしょう。人的リソースも最小限にとどめられます。運用開始後に効果を測定して自社に適しているか、継続できそうかなどの判断を行います。成功すれば次のフェーズに移りやすくなるでしょう。また、経営者層はマーケティングDXの必要性を正確に理解し、中長期的な予算編成ができるようにしたいものです。
デジタル技術の導入や革新には、経営者層から従業員まで社内すべての理解が不可欠です。 営業活動やマーケティング活動にも影響するため、あらゆる部署で情報共有を行い、理解を深めましょう。マーケティングDXの意義や目的を把握することで、従業員の意欲も上がります。
既存のビジネスを一新して、革新的なビジネスモデルやサービスを創り出すためには、短期間では結果は出ません。中長期的な観点からゴールを設定し、それまでに実行しなければならない目標を含めて戦略を練ります。社内での意識統一や予算の確保、人材の育成などを並行して行うとよいでしょう。
さまざまにあるITツールの中から自社に合った機能を選ぶことも大切です。最新技術に頼りすぎて、使いこなせる人材がいなければ本末転倒になります。企業の業務プロセスや従業員のスキルなどを考慮して選ぶようにしましょう。外部リソースにコンサルティングを依頼したりBIツールを導入したりといった方法で、実現可能な導入を目指しましょう。
課題は山積みといえますが、間違いなくマーケティングDXは企業と顧客双方に多くの利益をもたらす取り組みです。ここではマーケティングDXを推進するメリットの具体例を詳しくご紹介します。現在、企業で感じている課題とあわせて検討材料にしましょう。
マーケティングDXを導入すると、従来よりも膨大なデータを有効に活用できます。多様化する顧客行動や市場動向などのデータの分析もスピーディーに行われるため、正確かつ素早い意思決定が可能です。
マーケターの直観や経験に基づいた意思決定だけでは、ズレが生じるかもしれません。しかし、データ分析に優れたシステムを活用することで、最適なタイミングとチャネルによって顧客へアプローチができます。
マーケティングDX導入後はマーケティング業務だけでなく、関連する業務も効率的に行われます。データ処理や日次・月次レポートの作成、帳票の発行など、担当の従業員が行っていた業務もデジタル化することで、業務が劇的に効率化できます。いわゆるルーティン業務に割いていた時間が短縮され、従業員はより企業の利益に関わる重要な業務に注力できるでしょう。
高度なデータ解析も可能で専門的な人材に依存せずに業務を行いやすくなります。そのため、人材費削減につながるケースもあるでしょう。
マーケティングDXでは、CRMやSFAといった情報基盤を活用して、顧客行動を一元管理できます。顧客のカスタマージャーニーを常にモニタリグができ、チャネルに適したアプローチが可能です。こうした戦略は顧客体験のクオリティ向上につながり、企業価値の向上に役立ちます。
業務の高度化によって最初は運用にとまどう現場もあるかもしれませんが、業務の自動化や効率化によって業務の改善点や課題を洗い出す時間が捻出できます。そのため、PDCAサイクルがまわしやすくなるでしょう。改善点への対策が速やかに講じられるようになります。
マーケティングDX導入によって、顧客や市場ニーズの把握が迅速にできるようになります。スピード感が重要視されるマーケティング部門においては、大きな強みになるでしょう。デジタルツールを有効活用できれば、ビジネスチャンスを生む次世代のビジネスモデルの構築が可能です。
大手地方銀行では長年、リテールバンキングに重点を置く銀行としての実績をもっています。2019年からは中期経営計画を実施しており、クラウドサービスの利用促進や重要戦略分野においての内部リソースの活用を目標として掲げていました。ソリューションサービスにサポートを依頼する上で決め手となったのは、金融関連事業への深い知見とビジネスアプリケーションSalesforceの導入実績の多さでした。
銀行では運営するコンタクトセンターのシステムにかかるコストと機敏性の不足が課題となっていましたが、SalesforceとコンタクトセンターシステムであるAmazon Connectを連携しています。電話応対中に顧客情報を画面に表示させたり、通話を自動的に記録したりといった機能を組み込みました。これらの機能によりオペレーターの応対スピードがアップして顧客満足度につながっています。
システムの保守や点検などの内製化を進める上で、トラブルがないシステムの安定稼働が大きく貢献したと言います。
グローバルに事業を展開する光学機器メーカーでは、医療機器も取り扱っています。安全性や有効性が最も重要視される医療機器は、法規制の対象となることが多いです。そのため、企業は製造から販売、管理などの工程をすべて適切に行わなくてはなりません。
メーカーでは顧客からのクレームがあった場合、カスタマーセンター、販売店、保守サービス会社、修理工場など複数の関連部署が連携して作業を進めています。これらを一元管理できるシステムがなかったため、部門ごとに作成した帳票データなどを活用していました。
クラウド型品質管理システムを導入したことで生産性、売上とも向上。この成功事例をきっかけにサービス業務の有償化を目標にして、グローバル品質情報管理システムの導入を決めました。Salesforceを基盤に、部門すべてを一元管理できるよう開発しています。
開発にはフィールドサービスソリューションを利用しており、海外拠点の業務形態に応じた最適化やERPシステムとの統合などを実現しています。システムの仕様決定から導入トレーニングまでのサポートもあり、短期間でシステムの立ち上げ、運用に成功しました。
マーケティングDXの意義や効果などを正確に知った上で導入に進みたいものです。また、事前の準備や計画も大切です。ここでは成功までのプロセスを解説します。
マーケティングDXへの第一歩として、まずは企業の現状把握から始めましょう。実施しているマーケティング施策や顧客情報などをデータ化すると分かりやすいです。アナログデータやオフラインの情報などもMAツールを活用して取り込むとよいでしょう。データを分析して現状の課題や利用中のツールの評価、人材の過不足などを明確にしておきます。
現状の把握ができれば、マーケティングDXを導入したあとのビジョンを決めます。5年後、10年後など中長期的なゴールを見据えて、具体的な目標を策定しましょう。次のようなSMARTの法則 を用いると、より現実的な目標が見えてきます。
Specific:明瞭で具体性のある目標 Measurable:誰が見ても分かる定量化した目標 Achievable:現実的に実現可能な目標 Relevant:自分が属する部門や会社のビジョンに則した目標 Time-bound:達成できる期限を定めた目標
あわせてDX推進のロードマップを作成しておくとよいでしょう。目標が具体化されると、達成に必要な戦略、リソースの確保などの計画が立てやすくなります。早い段階で導入すべきデジタルツールを選定しておけば、ツールを使いこなせる人的リソースの採用や育成に十分な時間を割けるでしょう。
目標策定、ロードマップ作成が完了すれば、プランにそって、マーケティングDX推進の社内体制作りに進みます。DX推進には組織改革が必要ですが、組織自体をDX化のためにすべて変えるのは少々無理があり、部門によっては反発をまねく恐れがあります。自社の業務形態や人事体系も鑑み、無理のない体制を確立していきましょう。社内改革のポイントには次のようなものがあります。
・デジタルスキルに長けた人材が多く在籍するIT部門の拡張 ・各部門にDX推進部門の人材を配置してサポートを行う ・DX推進を専門的に扱う新部門の立ち上げ ・DX推進のリーダーとしてCDO(最高デジタル責任者)を任命 ・DX推進部門と経営者層との密に連携可能な体制
企業の規模や人材によって最適な体制は異なるため、自社に合った体制がベストです。
体制が整えば、目標に向けてマーケティングDXを導入します。初めから大規模な導入は控え、最初は実験的なスモールスタートが理想的です。段階的に徐々に拡大していくほうが社内での理解が得られやすいです。
導入を実行すれば終わりではありません。導入したツールの効果測定、ツール導入によって変化した顧客行動のトラッキング、現場のヒアリングなどを行い、PDCA サイクルをまわして、次の施策やフェーズにつなげていきましょう。これらの継続的な繰り返しがマーケティングDX推進の重要な過程です。
成果を出すためには、社内にDX化に精通した人材がいても、外部のコンサルティングやDX支援事業者などにサポートしてもらうほうよいでしょう。円滑かつスピーディーな導入には外部のサポートが欠かせません。専門の事業者はツールに関する豊富な知識や実績、ノウハウなどがあるため、自社にマッチするツールの選定や導入方法などを依頼するのに最適です。
事業者によっては施策の立案から基盤構築、運用までを一気通貫で手厚くサポートしてくれるところもあります。無料のセミナーや資料のダウンロードなどを利用して、ソリューションサービスを比較検討するのもよいでしょう。
▼電通総研の営業支援ソリューションでは、企業の予算に合った施策立案から運用までを徹底サポートしています。さらに運用後の結果を検証して、効果の度合いによって改善策などを提示するサービスも提供しています。将来的には自社ですべてこなせるようなサポートも可能です。 ・電通総研のデジタルマーケティングソリューション https://crm.dentsusoken.com/digital-marketing/
マーケティングDXは徐々にさまざまな業種で導入され、一定の効果があげられています。成功すれば業務効率化や新たなビジネスモデルの創出、顧客体験の向上など多くの利点があるため、ぜひ導入したいものです。マーケティングDX成功のカギは、信頼がおけて実績も豊富な外部のサポートにあると言ってもよいでしょう。まずは取り扱っているツールやサービスの内容を詳しく知り、自社との親和性などを考慮して選びましょう。
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