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CRM戦略の立案から実行まで!メリットや推進ポイント、成功ポイントまで解説(Vol.130)

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CRM戦略とは、顧客との関係を深め、成果を向上させるための施策やプロセスのことです。営業・マーケティング・カスタマーサポートなどの各部門がデータを活用し、一貫した顧客体験を提供するための基盤となります。

競争が激しい市場においては、顧客ロイヤリティの向上や利益拡大に直結するため、CRM戦略の立案と実行は欠かせない要素といっても過言ではありません。

しかし、多くの企業がCRMを導入しても活用できずに終わる、戦略が不十分で成果が出ないといった課題に直面しています。

本記事では、CRM戦略の基礎知識からメリット、立案から実行までの流れ、実際の成功事例をわかりやすく解説します。

CRM戦略とは

CRM(CustomereCustomer Relationship Management:顧客関係管理)戦略とは、顧客との関係を深め、新規顧客の創出やアップセル/クロスセルを促進し、結果としてビジネスの収益を向上させる「全社的」な取り組みです。

CRMを単なる顧客情報の管理ツールと把握してしまうと、その効果は限定的です。重要なのは、顧客データをどのように「全社で共有・活用」するかという視点です。

マーケティング部門だけがCRMシステムを使用している場合、運用が部分的になりがちです。一方、営業やカスタマーサポートなど、顧客と接点を持つすべての部門が同じデータを共有・編集できる環境であれば、顧客の課題や要望を統一した視点で理解し、一貫した体験を届けられます。

たとえば、ある顧客がウェブサイトで資料をダウンロードし、営業担当に質問し、その後サポートにも問い合わせた場合、すべての履歴が連動していればスムーズに対応できます。この一貫性が顧客体験の質を高め、「この企業は私を理解している」という信頼を生みます。

CRM戦略が重要な理由

それでは、なぜCRM戦略が注目されるのでしょうか。

マッキンゼーの調査(※1)によると、消費者の71%がパーソナライズされたコミュニケーションを期待している一方で、76%はそれが実現されないと不満を抱くとされています。さらに、Salesforceのレポート(※2)では、テクノロジーの進化に伴い81%の顧客が迅速なサービスを求めていることが示されています。

もし顧客の要望に応えられず、担当者が変わるたびに対応がリセットされるような状況が続けば、顧客はすぐに競合他社へ流れてしまうでしょう。

また、成長スピードの速い企業では、パーソナライズされた顧客対応による収益が、そうでない企業よりも約40%高いというデータもあります。これは、顧客一人ひとりを大切にすることが単なる印象向上ではなく、具体的な投資対効果を生むことを示しています。

かつては大量生産・大量広告によるビジネスが主流でしたが、情報過多の現代では、顧客との適切な関係づくりが成功の鍵となっています。

※1 出典:McKinsey&Company「The value of getting personalization right—or wrong—is multiplying」

https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/the-value-of-getting-personalization-right-or-wrong-is-multiplying

※2 出典:Salesforce「State of the AI Connected Customer」

https://www.salesforce.com/resources/research-reports/state-of-the-connected-customer/

CRM戦略の立案方針

効果的なCRM戦略を立案するためには、以下4つのポイントを押さえることが重要です。

部門間の連携を強化する

CRM戦略を立案するうえでまず大切なのは、営業、マーケティング、カスタマサポートなど、顧客と接点を持つすべての部署が連携して情報共有できる体制を構築することです。

部署ごとに利用しているシステムがバラバラで、顧客データの保管場所や入力ルールもまちまちになっていると、同じ顧客についての情報を探すのに手間がかかり、担当者間のやり取りもスムーズにいかなくなります。

たとえばマーケティング部が獲得したリードを営業部へ引き継ぐ際、顧客の興味・関心を示すデータが欠落していると、せっかく興味を持ってくれた人に対して適切なタイミングで連絡できず、商談の機会を逃してしまうことにもなりかねません。

逆にサポート部署では、お客様から「過去にも問い合わせをしたのに、対応履歴がまったく共有されていない」という不満を受けてしまうリスクが高まります。

データの分断を防ぐためにも、早い段階で共通のルールやシステムを整え、どこで何を管理し、誰がどうアクセスできるかを明確に定める必要があるのです。

顧客にパーソナライズした体験を届ける仕組みを作る

顧客にパーソナライズした体験を届けるためには、ただデータを蓄積するだけではなく、その分析結果を迅速かつ全体で活用できる仕組みの構築が重要です。

購買履歴や問い合わせ履歴はもちろん、ウェブサイトでの閲覧データやSNS上での反応、あるいは営業担当者が個別に聞き取った要望まで、一見するとバラバラに思える情報にも関連性があるかもしれません。

また、過去の購入頻度や問い合わせ内容を照合すると、解約寸前の顧客のサインが見えてくることがあります。あるいはSNS上でのポジティブなコメントから、今がアップセルの好機だと判断できる場合もあります。

分析や施策の効果測定が属人的になっているのであれば、組織全体でデータを横断的に扱い、定量的な判断を行うカルチャーを育てることが必要になります。

データドリブンの意思決定をする

CRMを導入する最大のメリットの一つは、顧客データを蓄積・分析し、それを根拠とした意思決定ができることです。

たとえば、新規顧客獲得のためのマーケティング施策や、営業の商談プロセスの最適化、リピーターを増やすための施策など、あらゆる活動の効果を数値で評価し、改善を重ねられます。

従来の「経験や直感に頼った意思決定」では、施策の成否を正確に判断することが難しく、属人的な判断に依存しがちでした。しかし、CRMのデータを活用すれば、どの施策がどの程度の成果を上げたのかを可視化し、事実にもとづいた最適なアクションの選択が可能になります。

LTVの向上を重視する

 

CRM戦略の成果を最大化するには、LTVの視点を持ち、施策を講じることが不可欠です。

初回購入にとどまらず、継続購買やアップセル/クロスセルを通じて、顧客が長期的にもたらす価値を最大化する発想が求められます。

新規顧客の獲得コストと、既存顧客の維持・拡大コストを比較すると、既存顧客のロイヤリティ向上の方がはるかに効率的であるというデータもあります。

このように、既存顧客との関係を強化し、収益拡大につなげることが極めて重要です。

もし新規顧客獲得に偏っていたなら、この機会にLTV向上を軸にCRM戦略を見直してみてはいかがでしょうか。

既存顧客が再購入したり、追加サービスを利用したり、口コミで新規顧客を呼び込んだりする可能性は、戦略的に施策を講じるほど高まります。

CRM戦略の具体的な推進手順

CRM戦略を効果的に推進するためには、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。ここでは、CRM戦略を成功へ導くための具体的なステップを詳しく解説します。

STEP1 :目的の明確化

CRMを導入する最大の理由は、顧客との関係性を強化し、最終的には売上や顧客満足度を向上させることにあります。しかし、CRMの導入目的が明確でなければ、適切な施策を講じることができず、結果として期待した成果が得られない可能性が生じます。

たとえば、新規顧客の獲得が目的なら、マーケティング機能に強みを持つCRMを導入し、マーケティングと営業の連携を強化することが優先事項となるでしょう。

一方で、LTVの向上を目的とする場合は、リピーターの育成やクロスセル・アップセルの強化が重要になります。この場合、CRMを活用して顧客の購買履歴や行動データを分析し、最適なタイミングで関連商品や上位プランを提案する仕組みを構築すると効果的です。

このように、CRMを導入する際は、「自社がどのような課題を解決し、どの指標を向上させたいのか」 を明確にすることが不可欠です。目的が不明確なまま導入すると、データを蓄積するだけで活用されず、形骸化してしまうリスクがあります。

STEP2:ペルソナとカスタマージャーニーの制作

CRM戦略を成功させるには、顧客理解を深め、最適なアプローチを設計することが不可欠です。そのために、ペルソナとカスタマージャーニーを作成し、ターゲット顧客の行動やニーズを可視化することが重要になります。

ペルソナの作成には、顧客インタビューや保有データを活用します。年齢・性別・職業といった基本属性に加え、購買動機や意思決定に影響を与える要因、情報収集の手段などを詳細に分析し、解像度の高いペルソナを構築しましょう。

一方、担当者の思い込みやブレインストーミングだけで作成したペルソナは、実在しない顧客像となり、施策の混乱を招く可能性があります。

カスタマージャーニーの作成では、顧客がどのような課題を抱え、どのタイミングで情報収集を行い、最終的に購買や契約に至るのかを整理します。認知・検討・比較・購入・リピートといった各ステージごとに、顧客が求める情報やタッチポイントを特定し、適切なコンテンツを提供することが重要です。

ペルソナとカスタマージャーニーを明確にすることで、マーケティングや営業の精度が向上し、顧客に最適な体験を提供できるようになります。

STEP3:一貫した顧客体験の設計

ペルソナとカスタマージャーニーを作成した後は、各ステージで一貫した顧客体験を提供できるように施策を設計します。

多くの企業では、認知から購買までのプロセスに注目しがちですが、長期的な関係構築のためには、購買後のフォローやリピート促進まで視野に入れた設計が欠かせません。

購買後のフェーズでは、顧客満足度を向上させ、継続的な関係を築くことが重要です。

たとえば、BtoBビジネスでは導入後のサポート体制を強化し、カスタマーサクセスの観点から追加提案を行うことで、LTVの向上を見込めます。一方、BtoCでは、購入後のフォローアップメールやロイヤリティプログラムを活用し、継続的な利用を促進する施策が有効でしょう。

また、この段階で各部門の連携を意識することが重要です。

営業、マーケティング、カスタマーサポートが統一された情報をもとに顧客対応を行うことで、スムーズな体験を提供できます。営業が商談中に判明した新規顧客の不安点を共有すれば、マーケティングはそれを解消するメール配信をし、スムーズな導入を支援するといった具合です。

CRMを活用し、各部門がリアルタイムで顧客データを共有する仕組みを構築することで、顧客満足度の向上と業務の効率化を両立させられます。

STEP4:KGIとKPIの設定

ここまでのステップをもとに、KGIとKPIの設定を行います。

「KGI」は重要目標達成指標、つまり今回のCRM戦略における最終目標(ゴール)を定量的に定めたものであり、「KPI」は重要業績評価指標、つまり前述のKGIを達成するまでの途中経過において、進捗や成果が順調であるか、適切なプロセスが実行されているかなどを定期的に計測・評価するための指標です。

KGIを適切に設定することで、最終目標をあらかじめ明確化でき、プロジェクト進行中においても「ゴールまでどのくらいの距離にいるのか」を測ることができます。STEP1で明確化した目的をもとに、最終目標を数値化しておきましょう。

KPIを適切に設定することで、CRM戦略が正しく機能しているかを可視化し、成果を最大化できます。しかし、単に数値目標を定めるだけでは不十分です。各KPIが事業全体の目標とどのように結びついているかを明確にし、部門間の連携を意識した設計が重要になります。

たとえば、マーケティング部門が「リード獲得数」だけを重視すると、関連性の低いリードが増え、営業部門の負担が増す可能性があります。これを防ぐには、単にリード数を追うのではなく、「一定の購買意欲を示した見込み客を営業に引き渡す」といった質の基準を加える必要があります。

具体的には、以下のような基準を設けると効果的です。

  • リードスコアリングを実施し、特定のスコア以上のリードのみを営業に渡す 
  • ウェブサイトの製品ページを閲覧した見込み客や、ホワイトペーパーをダウンロードしたユーザーを対象にする 
  • メールマーケティングの開封率やクリック率が一定以上のユーザーを重点的にフォローする 

このように、マーケティングと営業のKPIを連携させることで、単なる数値目標の達成ではなく、最終的な成約率の向上につなげられます。

また、CRM戦略の成功には、短期的な指標だけでなく、中長期的な指標の設定も不可欠です。たとえば、LTVやリテンション率を追うことで、顧客との関係を長期的に強化し、施策を継続的に改善できるでしょう。

STEP5:CRMの選定

CRMを未導入の場合、この段階で適切なツールを選定します。CRMは単なる顧客管理ツールではなく、マーケティング、営業、カスタマーサポートを統合し、データを活用する基盤となるため、事業の目的や運用体制に適したものを選ぶことが重要です。

詳しい選定ポイントについては後述します。

STEP6:施策の実施

CRM戦略の設計が完了したら、具体的な施策を実行に移します。

この段階で最も重要なのは、CRMを業務フローに組み込み、現場の運用をスムーズに進めることです。各部門が連携して活用することで、顧客対応の質を向上させ、売上の最大化につなげられます。

まず、CRMに蓄積されたデータを活用し、ターゲットごとに最適なアプローチを実施しましょう。たとえば、以下のような施策です。

  • マーケティング部門:各セグメントに適したコンテンツ配信やメールマーケティングを行い、リードナーチャリングを推進。 
  • 営業部門:CRMのデータを活用し、商談の優先順位を決定。リードスコアリングにより、成約の可能性が高い顧客を特定し、効率的な営業活動を実施。 
  • カスタマーサポート部門:過去の問い合わせ履歴を活用し、一貫した対応で顧客満足度を向上。以前の問い合わせ内容や解決策を参照することで、顧客の負担を軽減。 

施策の実施にあたっては、部門ごとに異なるKPIを設定しつつも、全社的な目標と整合性を持たせることが不可欠です。各部門が独立してしまうと、CRM戦略のメリットである一貫した顧客体験の提供が困難になります。

また、CRMの導入初期は運用定着に時間を要するため、必要に応じてトレーニングを実施し、全員がツールを効果的に活用できるようサポートすることが重要です。

初期段階で「CRMが現場の負担を増やすもの」と認識されると、運用が定着せず形骸化するリスクがあります。定期的なフォローアップや社内マニュアルの整備を行い、スムーズな業務運用を支援することが成功の鍵となります。

STEP7:分析と改善

施策を実施した後は、データにもとづいて成果を分析し、改善を繰り返すことで、CRM戦略の精度を高めていきます。単発の施策で終わらせず、効果を可視化しながら継続的に改善することが重要です。

分析では、設定したKPIに対する成果を評価し、効果的な施策と改善が必要な施策を明確にします。

たとえば、商談の成功率や平均リードタイムを確認し、成約率の高い顧客セグメントを特定できれば、マーケティング部門はそのデータを活用し、より精度の高いターゲティング施策を行えるでしょう。

具体的には、成約率の高いセグメントと同じ属性を持つ見込み顧客に広告を配信したり、セミナー・ウェビナー招待やメール配信によるナーチャリングを強化したりすることが可能です。営業部門も、CRMのデータを活用し、過去の成功パターンをもとにアプローチ手法を最適化できます。

このように、部門間で情報を共有しながらデータを活用し、施策を改善することが重要です。自部門だけのデータ分析では部分最適化は可能でも、全体最適化にはつながらない可能性があります。

CRM戦略の目的は、単に短期的な売上を伸ばすことではなく、顧客との長期的な関係を築き、持続的な成長を実現することです。そのためには、データにもとづく継続的な改善を行い、顧客一人ひとりに最適な価値を提供し続けることが不可欠です。

また、CRM戦略立案にあたっては、ビジネスにおいてさまざまな顧客接点を持つ「オムニチャネル(Omni-Channel Retailing)」という考え方をしっかりと踏まえておくことも大切です。顧客接点であるオムニチャネルの中心に、CRMが位置するためです。

企業と顧客が接して得た情報をCRMに集めることが重要であり、またその際には中心となるCRMと、顧客接点の各チャネルがタイムリーにデータ共有されていることが大切です。

電通総研の顧客接点DXソリューションでは、CRMとチャネルのシステム整備・運用をはじめ、ビジネスモデルのDX変革を推進するためのさまざまなソリューションを提供しています。

CRM戦略において課題をおもちの場合はぜひ、まるごと電通総研へおまかせください。

電通総研の顧客接点DXソリューション 

▼オムニチャネルについての基礎知識や、マルチチャネル・O2Oなどの関連知識についてはぜひこちらの記事をご覧ください。 

コンタクトセンターにおけるオムニチャネルの重要性 マルチチャネルとO2Oの違いも解説(Vol.24) 

CRM戦略を効果的に実施するポイント

ここでは、CRM戦略を効果的に実施する3つのポイントを見ていきましょう。

自動化を活用する

CRMを単なる顧客データの管理ツールとして使うのではなく、自動化を取り入れることで、生産性を向上させ、顧客対応の質を高められます。

たとえば、MAとCRMを連携させれば、行動データをもとに最適なタイミングで顧客ごとにパーソナライズされたメッセージを自動配信できます。

【具体例】 

  • 特定のページを〇回閲覧した見込み客にウェビナー招待メールを送信 
  • ECサイトでカートに商品を入れたが、購入せずに離脱したユーザーへリマインドメッセージを送信 
  • 展示会で名刺交換したリードに、関心を示した製品に応じたコンテンツを配信 

 

営業活動でも、リードスコアリング機能を活用し、確度の高い見込み顧客を自動的に抽出することで、営業担当者が最も効果的なターゲットにリソースを集中できるようになります。 

また、カスタマーサポートでは、問い合わせ履歴をもとにFAQやチャットボットを活用し、よくある質問への対応を自動化することで、業務負担を軽減しながら迅速な対応を行えます。 

このように、自動化を取り入れることで、人的リソースをより重要な業務に集中させ、売上向上や顧客満足度の向上につなげることが可能です。 

データ分析に注力する

CRM戦略の基本は、データにもとづく意思決定です。各部門の顧客情報を一元管理し、データ分析を通じて施策につながる示唆を導きましょう。

データ分析に慣れていない場合は、まず顧客をセグメントに分類することから始めます。年齢や性別だけでなく、業界、企業規模、行動データ、購買履歴など、多角的な視点でセグメントすることで、パーソナライズ施策を実施しながら有益なデータを収集できます。

最初は難しく感じるかもしれませんが、定期的にデータを見る習慣をつけることで、「このセグメントの顧客はリピート率が高い」「この訴求は効果的」といった示唆を発見しやすくなります。

データ分析の文化を根付かせ、客観的な事実にもとづく意思決定を行えるようにしましょう。

チーム全員が活用できるようにする

CRMを最大限に活用するには、組織全体で使いこなせる環境を整えることが重要です。CRMにデータが蓄積されなければ、正確な分析ができず、施策の効果も十分に発揮されません。

そのため、CRM導入後はチーム全員がスムーズに活用できるよう、トレーニングを実施し、運用ルールを統一するようにしましょう。具体的には、以下のような施策が考えられます。

  • データ入力のルールを統一し、情報の不備や重複を防ぐ 
  • 定期的なトレーニングを実施し、CRMの活用方法を現場に浸透させる 
  • ダッシュボードやレポート機能を活用し、成果を可視化・共有する 

また、現場でCRMの活用が進まない場合は、その理由を分析し、業務に合ったカスタマイズやサポートを行うことも重要です。実際に使用するメンバーの意見を取り入れ、運用しやすい環境を整えるようにしましょう。

CRM戦略の施策例

ここでは具体的なイメージを持っていただけるように、CRM戦略の施策例をご紹介します。

顧客行動データの活用

CRMを活用することで、顧客の購買傾向や興味関心を詳細に分析し、最適なタイミングでアプローチできます。これにより、顧客との接点を強化し、売上の最大化を図れます。

たとえば、過去の購買履歴やウェブ上の行動データ(商品ページの閲覧履歴、カート放棄、メルマガの開封率など)をもとに、休眠顧客向けの施策を実施します。一定期間購入のない顧客には、限定オファーやクーポンを提供し、再購入を促進。さらに、ターゲティングメールに加え、SNS広告やリターゲティング広告を活用すれば、より効果的に関心を引き戻せます。

また、アップセル/クロスセル施策として、購買履歴にもとづく関連商品の提案も有効です。たとえば、ノートパソコンを購入した顧客に対し、ワイヤレスマウスや外付けSSDを提案すれば、追加購入を促せます。同様に、エントリーモデルを購入した顧客には、次回の買い替え時に上位モデルを提案することで、顧客単価の向上が期待できます。

このように、CRMを活用したデータ分析をもとに、適切なタイミングで最適なオファーを提示すれば、顧客との関係を強化し、ビジネスの成長につなげられます。

カスタマサポートの強化

顧客データとコール履歴をリアルタイムでCRMに記録・共有することで、過去の対応履歴をもとに一貫したサポートを提供できます。

たとえば、コールセンターのオペレーターが対応する際、顧客の過去の問い合わせ内容や購入履歴をCRM上で確認できれば、顧客に何度も同じ説明を求めることなく、スムーズな対応が可能になります。

さらに、AIチャットボットと連携し、過去の問い合わせデータをもとに自動応答を最適化することで、対応の効率化と顧客満足度の向上を両立できます。

また、FAQやナレッジベースとCRMを統合し、顧客が自己解決できる環境を構築すれば、問い合わせ件数を削減しながら、サポート体験を高めることが可能です。

自社に適したCRMを選ぶチェックポイント

適切なCRMを選ばなければ、導入後に「欲しい機能が不足している」「現場が使いこなせない」といった問題が発生する可能性があります。ここでは、CRMを選ぶ際にチェックすべきポイントを解説します。

自社に必要な機能がそろっているか

CRMには、MA、SFA、カスタマーサポートの管理機能など、さまざまな機能があります。

たとえば、見込み顧客の獲得とナーチャリングを重視する企業であれば、MA機能が充実したCRMが適しています。一方で、営業活動の効率化が目的であれば、SFA機能が充実したCRMが望ましいでしょう。

また、EC事業を展開する企業であれば、購買履歴やカスタマーサポートのデータを統合できるCRMが有効です。

まずは、自社の課題を整理し、必要な機能を明確にしましょう。現在使用しているシステムとの重複を避けるためにも、既存のツールとCRMの役割を整理し、最適な機能構成を持つCRMを選定することが重要です。

直感的に使用できるか

CRMの効果を最大限に発揮するには、現場の社員がストレスなく活用できることが不可欠です。

高機能なCRMであっても、操作が複雑で使いづらい場合、現場に浸透せず形骸化してしまう可能性があります。そのため、直感的なUIを持ち、業務フローに適した設計のCRMを選ぶことが重要です。

導入前には、実際に現場の社員にテストしてもらい、操作性や利便性を評価することをおすすめします。また、導入後のトレーニングやサポート体制が整っているかも重要なポイントです。

他システムと連携できるCRMを選ぶ

CRMは、マーケティング・営業・カスタマーサポートなどのデータを統合し、全社的な顧客管理を行うための基盤となるシステムです。そのため、既存の業務システムとスムーズに連携できるかどうかを確認することが重要です。

よくあるケースが、営業部門がすでにSFAを導入しており、新たなシステムの導入に反発するというもの。この場合、既存のSFAと円滑にデータ連携できるCRMを導入しなければ、営業と他部門の情報が分断されてしまいます。

同様に、カスタマーサポートがコールセンターシステムを使用している場合、顧客対応履歴をCRMに自動連携できるかどうかが重要になります。

他システムとの連携が容易なCRMを選べば、部門間のデータ共有がスムーズになり、業務の効率化や顧客対応の精度向上につながります。事前にAPI連携の可否や、標準で対応している外部サービスを確認し、導入後の運用イメージを具体的に検討することが大切です。

CRM戦略の成功事例

スルガ銀行は、顧客情報の一元化と業務効率化を図るため、インターネット支店の預金口座開設システム、コールセンターシステム、CRMシステムを統合する全社プロジェクトを推進しました。

従来のシステムは個別最適化が進んでおり、機能の重複、外部委託による開発の遅延、維持費の増加が課題でした。これを解決するため、Salesforceの標準機能を活用し、カスタマイズを最小限に抑えたシステムを構築。その結果、開発期間とコストを大幅に削減し、業務プロセスの最適化に成功しました。

さらに、内製化も推進。システム部門が主導して開発・保守のスキルを習得し、Salesforce導入を支援した電通総研のアドバイスを受けながら、迅速なシステム改善を可能にしました。

これにより、インターネット支店の口座開設システムの展開で数億円のコスト削減を実現し、コールセンターの運用コストも40~50%削減しました。

▼本事例の詳細は以下でご紹介しております。

https://www.dentsusoken.com/case_report/case/2024surugabank.html

CRM戦略を推進し、競争力を高めよう

CRM戦略は、単なるソフトウェアの導入ではなく、企業の成長と競争力向上を支える重要なビジネス戦略です。適切に導入すれば、顧客満足度の向上、収益増加、業務効率の改善が期待できます。

市場競争が激化し、顧客の期待が高まる中、CRM戦略の重要性は今後さらに増すでしょう。企業が競争に勝ち抜くには、CRMを単なるITツールではなく、「顧客中心のビジネス戦略」として位置づけることが不可欠です。

また、当サイトでは、顧客接点DXソリューションに関するダウンロード資料を多数ご用意しております。ぜひダウンロードいただき、資料をご活用ください。

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