ChatGPTをはじめ、GeminiやCopilotなどの新世代モデルが続々と登場し、企業の生産性や創造性を根本から変えつつあります。
一方で、「自社では生成AIを具体的にどの業務に活用できるのか」「他社の成功事例を知りたい」と感じる担当者も多いのではないでしょうか。導入が進む一方で、ROIを実感できていない企業も少なくありません。
そこで本記事では、2025年時点で注目されている国内外の生成AI活用事例9選を業界別にわかりやすく紹介します。
目次
生成AIとは、大量のデータから学習したAIモデルが、文章、画像、音声、動画などのコンテンツを生み出すシステムのことです。
従来のAIが過去データをもとにした予測や分類が中心であったのに対し、生成AIは過去データを踏まえながら、新たな情報や表現を生み出す点が特徴です。
以下では、改めて生成AIの種類を整理します。
生成AIの技術基盤を理解することは、自社向けのAI活用と適切なツール選定に重要です。この分野でポイントとなるのは、基盤モデルと大規模言語モデルの2つです。
まず基盤モデル(Foundation Models)とは、テキスト、画像、コードなど極めて膨大なデータで事前に訓練されたAIモデルです。
特定のタスクに特化するのではなく、幅広いタスクに応用できる万能な土台として設計されています。この基盤の上に、顧客対応AIや外観検査AIといった、特定の業界・業務に特化した機能を構築し、カスタマイズして利用されます。
大規模言語モデル(LLMs)とは、この基盤モデルの一種であり、自然言語処理に特化したモデルです。ChatGPT、Gemini、Copilotなどがこれに該当します。人間と高いレベルで自然な対話が可能で、テキスト生成、要約、翻訳、ソフトウェア作成など多岐にわたるアプリケーションに利用されます。
項目
役割・概要
活用イメージ
基盤モデル(Foundation Models)
テキスト・画像など膨大なデータで事前学習されたAIの土台。幅広いタスクに転用可能
顧客対応AI、外観検査AIなど、業務特化モデルのベースとして利用
大規模言語モデル(LLM)
基盤モデルの一種で、言語処理に特化。文章生成・要約・翻訳などを実行
ChatGPTやGeminiによる問い合わせ対応、文章生成、業務自動化
大規模言語モデルの進化は、高度な文脈理解による質問応答を実現し、顧客接点におけるサービス向上に大きく貢献しています。
▼Microsoft Copilotに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。 https://crm.dentsusoken.com/blog/copilot_vol91/
小売・Eコマース業界は、生成AIの恩恵を最も早く、広範囲に享受している分野の一つです。リアル店舗とデジタル購買体験をシームレスに連携させ、顧客接点を大きく変革しています。
課題
解決策
成果
豊富な種類のワインの中から、顧客が自分の好みに合う一本を見つけるのは難しい
Geminiモデルを搭載した対話型AI「AIソムリエ」をアプリに統合し、顧客の好みに応じてワインを紹介
オンライン/オフラインの両方で、パーソナライズされた商品推薦が可能になった
Carrefour Taiwanは、GoogleのGeminiモデルを活用し、顧客の料理や好みに合わせた最適なワインを提案するAIソムリエをアプリに導入しました。
顧客はオンラインで提案を受け、アプリ上でワイン在庫のある店舗を確認できるようになり、実店舗とオンラインがシームレスにつながる体験が実現しました。結果、来店頻度や顧客満足度の向上に貢献しています。
膨大な数のユーザーからの問い合わせに、迅速かつ的確に対応し、顧客満足度を維持・向上させる必要があった
Google CloudのVertex AIを活用し、問い合わせ対応を支援するAIエージェントを導入
従業員の作業負荷を20%削減しつつ、500%という高いROIを予測。顧客体験が大幅に向上
また、EC領域ではメルカリがGoogle Cloudの生成AI開発プラットフォームVertex AIを活用し、問い合わせ対応のAIエージェントを構築しています。定型質問はAIが即時回答し、担当者は高度な判断を伴う案件に集中できるようになりました。
結果、各担当者の作業負荷は20%削減、ROIは500%を見込むなど、顧客対応の生産性が大きく改善しています。
生成AIの導入により、問い合わせ対応部門が単なる処理部門ではなく、価値創造の役割を担う部門へ変化した点も注目すべきポイントです。
データの正確性と厳格なコンプライアンスが求められる金融業界において、生成AIは大きな変化をもたらしています。
複雑な定型業務を自動化することで、専門知識を持つ行員をルーティンワークから解放し、より付加価値の高い戦略的な業務へとシフトさせているのです。
複雑な投資管理業務で顧客対応を迅速化し、成長を維持する必要があった
Amazon Bedrock × SageMakerでAI搭載プラットフォーム「CWIC」を構築
応答速度が向上しサービスチケットが減少。人員増なしで 20%の事業成長を実現
投資運用会社のClearwater Analyticsは、さまざまな生成AIをAPI経由で利用できるAmazon BedrockとSageMakerを活用し、AI搭載プラットフォーム「CWIC」を構築しました。このツールは、顧客対応の自動化に加え、投資運用の判断を支援しています。
金融ビジネスにおいて、迅速で正確な情報提供は顧客満足度に直結しますが、同社はAI活用により応答速度が大幅に向上しました。
結果として、人員を増やすことなくビジネスを20%成長させています。生成AIが業務効率化に留まらず収益向上に貢献する方法を示しています。
融資審査業務において、稟議書の作成に多くの時間が割かれ、行員が顧客対応・提案に十分な時間を使えなかった
生成AIサービスを導入し、法人顧客の財務情報をAIが自動分析し、稟議書作成を支援する仕組みを構築
融資担当行員1人あたり、月最大約8時間の業務時間削減が可能であることが実証された
横浜銀行は、法人顧客の財務情報を自動分析し、融資の稟議書作成の自動作成による業務効率化を目的に、生成AIの導入を決めました。
行員は専門知識を要する書類作成に多くの時間を費やしていますが、このAI活用により、行員1人あたり月約8時間の業務時間を削減しました。削減された時間は、ヒアリングや顧客への提案業務という、より高い付加価値を生む領域に再配分されています。
この事例は、生成AIが人間にしかできない創造的な業務に集中できる環境を提供し、ビジネスの質的向上を実現するツールであることを示した例です。
製品品質が生命線であり、生産性向上が競争力を左右する製造業において、AIは大きな役割を果たしています。
熟練者の経験と勘に頼ってきた品質管理やプロセス改善をデータドリブンなアプローチへと変化させ、改善サイクルを劇的に高速化しているのです。
ベビーチーズの包装を人間の目視で検査しており、多くの人員と時間が必要だった
AIを活用した製品外観検査装置を開発。カメラで撮影した画像をAIがチェックし、製品の良否を判定する
検査員数を従来の約4分の1に削減できる見込み。検査員はより高度なスキルを要するオペレーター業務へ移行
六甲バターは、チーズ生産強化を目的に神戸に新工場を設立したものの、同工場では約300品を製造しているため、業務効率化に課題を抱えていました。
そこで、カメラ画像で製品の良否を自動判定するAI外観検査装置を導入したのです。
従来は熟練検査員による目視が必要で、人為的なミスや人員確保が課題でした。AIが24時間体制でミスのない検査を行うことで、直接的な人件費の削減と生産効率の向上が実現します。
しかし、重要なのは業務効率化だけではありません。
単純な目視検査から解放された従業員は、機械のオペレーションやデータ分析といった、より高度で付加価値の高いスキルを習得する機会を得ています。
グローバルに広がる複雑なサプライチェーンと生産プロセスを、より効率的に管理する必要があった
Vertex AIで工場資産をスキャンし、3Dデジタルツインを構築。AIが数千回のシミュレーションを実施して最適な物流オペレーションを算出
現実世界では試せない改善策をAIが導出し、物流・生産プロセスの最適化が可能に
BMW Groupは、実際の工場を寸分違わずデジタル空間(3Dデジタルツイン)に再現し、AIに何千もの改善シナリオをシミュレーションさせています。
「もしロボットの配置を変えたら?」「もし供給ルートを変更したら?」といった実験を、生産ラインを1秒も止めることなく、物理的なコストを一切かけずに実行できるのです。
そのため、従来型の試行錯誤では発見できなかった最適な解決策を効率的に導き出せるようになりました。
ドライバーが運転に集中しながら、ナビや車両機能を安全かつ直感的に操作できるUIが必要だった
Geminiを搭載した「MBUXバーチャルアシスタント」を開発し、自然な会話で操作できる仕組みを導入
ドライバーが車と会話するだけで操作できるため、安全性が向上し、パーソナライズされた運転体験を実現
Mercedes-BenzはGemini搭載の「MBUXバーチャルアシスタント」を開発し、自然な会話によるナビ操作や設定変更を可能にすることで、ユーザーの運転体験の向上に貢献しています。
この事例は、アンビエントコンピューティング(コンピューターが環境に溶け込み、人々が意識することなくそのメリットを受けられる世界)の実現が近いことを示唆しています。
生成AIは自然なコミュニケーションを実現するため、ドライバーは「AIを操作している」という意識すら持ちません。自然に話しかけるだけで、AIが意図を汲み取り、サポートします。
このテクノロジーが溶け込むことで生まれるシームレスで直感的な体験は、ブランドのアイデンティティそのものとなります。
生成AIは、生産現場の効率化だけでなく、製品の機能そのものに組み込まれ、最終顧客の満足度を高める方法としても活用されているのです。
建設業におけるAI活用は、従来の設計や施工管理プロセスを効率化する方法として注目されています。
顧客や関係者とのイメージ共有に要する時間と労力を大幅に削減できる機能は、大きなメリットでしょう。
建築設計の初期段階で、スケッチからデザイン案を作成するのに多くの時間と手間がかかっていた
AI技術「AiCorb」を開発。スケッチや立体イメージを読み込ませるだけで外観デザインを瞬時に生成
顧客とのイメージ共有・合意形成の時間が大幅に削減され、設計プロセスが劇的に効率化された
総合建設会社である大林組は、AI技術「AiCorb」を開発しました。
このツールは、設計者が作成したスケッチやイメージ画像を入力すると、AIが外観デザインを自動生成するというもの。
従来、顧客の要望ヒアリング後、設計者が手作業で試行錯誤を繰り返し、複数の案を作成・修正する必要があり、時間とイメージのズレが生じるリスクがありました。
しかし、生成AI活用により、設計者と顧客のイメージ共有と合意形成のスピードが大幅に向上し、設計プロセスが効率化されたのです。
このように、高度な専門知識と創造性が求められる建設業においても、生成AIは業務のボトルネックを解消し、生産性を向上させる方法として不可欠な存在となりつつあります。
マーケティング・広告業界は、データにもとづく高度なパーソナライズと大量のクリエイティブ・コンテンツを迅速に開発する必要があるため、生成AIとの親和性が高い分野です。2025年においては、生成AIがマーケティングのあり方を変革しています。
幅広い顧客層に対して、それぞれに響くメッセージを込めた広告を大規模に展開するには、莫大な時間とコストがかかる
GoogleのVeo(テキストから動画を生成するAI)を活用し、数千ものハイパーパーソナライズ広告やEメールを一括生成
ブランドイメージを保ちながら、広告の大量パーソナライズが実現し、マーケティング効率と効果が大幅に向上した
従来、一人ひとりに合わせた個別化と数百万人に届ける大規模化はトレードオフの関係にありました。
しかし、Virgin VoyagesはGoogleのテキストから動画を生成するAIを活用し、たとえば「アクティビティに活発な20代カップル向け」と「静かな休暇を求める50代夫婦向け」で、それぞれに最適化された動画広告をAIに数千パターンも自動生成させています。
つまり、顧客一人ひとりに最適化された内容を迅速かつ大規模に配信できるようになったのです。
斬新で注目を集める広告キャンペーンを制作したいが、従来の制作手法には時間や予算の制約があった
2023年のホリデーキャンペーンで、人物・背景・グラフィック・ナレーション・音楽など広告制作の全工程を生成AIで完結
最先端技術とクリエイティブを融合した広告が高く評価され、「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’23」で優秀賞を受賞
ファッションビルのパルコは、2023年のホリデーキャンペーンの広告テーマを「伝統と革新」に設定しました。
その広告制作において、人物、背景、音楽など全工程を生成AIで手掛けるという挑戦を行いました。
空間が無限に広がるという生成AI特有の表現に成功し、前年のクリスマス広告媒体換算比で1,000%超のメディア露出という大きな注目を集める結果となりました。
さらに、その革新性が評価され、「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー’23」で優秀賞を獲得しています。
ここまで、数多くの企業の生成AI導入事例を確認してきましたが、ツールやサービスを導入するだけでは、期待した成果は見込めません。成功している企業には、共通する戦略的な導入方法と考え方があります。
ここでは、生成AI導入における4つの重要なポイントを解説します。
多くの企業が、生成AIを定型業務の自動化やコスト削減といった業務効率化を目的に導入します。
たしかに業務効率化は重要ですが、高い成果を実現している企業は、その次の段階へと進んでいます。すなわち、生成AIを単なる効率化ツールではなく、新たな付加価値を生む仕組みとして位置づけているのです。
たとえば、メルカリの事例は、問い合わせ対応の効率化に留まらず、担当者の時間を顧客サービス向上や複雑な課題解決に再配分することで、部門全体を価値創造の領域へと変化させました。
また、パルコは広告クリエイティブ制作に生成AIを活用することで、高品質なアウトプットを実現。さらに前年のクリスマス広告媒体換算比で、メディア露出がなんと1,000%超にもおよび話題も集め、企業のブランド価値を高めました。
自社でAI活用を推進する際も、AIで何を生み出すのかという問いから検討を進めてみましょう。
成功ケースの多くは、全社展開ではなく、特定の業務や部門でPoC(概念実証)を行い、その効果を可視化した上で、段階的に全社展開に移行するスモールスタートのアプローチをとっています。
スモールスタートは、成功体験を積み重ねる最良のアプローチです。全社的に展開した場合、現場のメンバーからの反発が起き、ツールが現場に根付かないという事態を招きかねません。スモールスタートで小さな成功体験を積み重ねることで、プロジェクトの賛同者が集まりやすくなります。
また、生成AIの適用時には、現場からのフィードバックの反映が欠かせません。システム導入の段階から、複数の現場メンバーの意見を取り入れ、実際の運用段階でもフィードバックを迅速に反映させましょう。
これにより、導入したものの活用されないというリスクを最小限に抑えられます。
生成AIの導入を成功させるには、経営層のトップダウン戦略だけでなく、現場からのボトムアップアプローチが欠かせません。日常業務の課題やAIが貢献できる業務についての知見を持っているのは、現場の担当者にほかならないためです。
現場の担当者が主体となって試行・改善を重ねることができる環境を提供し、AIツールへのアクセスとスキルを広げるべきでしょう。ここで重要なのは、推進力の高い人材を巻き込むことです。
興味関心の高い人材は技術取得に積極的であり、他の従業員への教育を担うアンバサダーとしての役割を果たします。導入初期段階で、いかに彼らを取り込めるかが、プロジェクトの成否を左右する要因となるでしょう。
金融業や製造業をはじめとする機密性の高いデータを取り扱う業界にとって、AIを導入する上でデータガバナンスとセキュリティ体制の整備は不可欠な前提条件となります。
投資会社のClearwater Analyticsの事例は、この重要性を明確に示しています。同社は、AWSといった信頼性の高いクラウド基盤を活用し、極めてセキュリティレベルの高い環境でAIを運用しています。
企業が生成AIを導入する際には、AIの活用と同時に、データの品質管理、アクセス権限、および厳格な管理ルールの整備が必須です。そうすることで、情報漏えいや誤用といった潜在的なリスクを最小限に抑えられます。
このデータガバナンスとセキュリティの両立を実現することこそが、生成AIを単なるツールとしてではなく、ビジネスの基盤技術として確固たる地位を築くための、最も重要な要件となるのです。
数多くの事例から確認できるように、生成AIは単なるコスト削減ツールではありません。
顧客へのサービス向上、新しい価値創造、そして企業の成長を実現します。
生成AI活用ポイントは、以下の4点に集約されます。
システム導入や改善を検討されている企業の皆様にとって、生成AIの導入は、単に新しい技術を取り入れるのではなく、ビジネスプロセスそのものを再設計する機会となります。
この再設計を成功させるためには、自社の課題とゴールを明確にし、最適なAI活用方法を選ぶ事前設計が何よりも重要です。
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