2025年10月13日、Salesforce社は「AIは人間に代わるものではなく人間の可能性を拡大するもの」として、次のビジネスステージへの進化とエージェンティックエンタープライズの到来を発表しました。あわせて世界初の、人間とAIエージェントが単一のシステム上で連携する信頼性の高いプラットフォームとして「Agentforce 360」の提供を開始しています。
従来のSalesforceや既存のCRMからの移行や新導入を検討している人のために、本記事ではSalesforceの新しいプラットフォームAgentforce 360の概要や新機能、導入メリットのほか、Googleなどのパートナーシップとの連携の詳細について解説します。
目次
Agentforce 360を理解するうえで必須となるのが、Salesforce(セールスフォース)社が提唱した「エージェンティックエンタープライズ(Agentic Enterprise)」という理念です。
エージェンティックエンタープライズ(Agentic Enterprise)とは、AIエージェントの活用によって実現する、ビジネス全体の変革および働き方の根本的な転換のことです。2025年10月13日にSalesforce社の会長兼CEOであるマーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が、イベントにて公開しました。
近年AI技術が進歩したことで、幅広い業種で既存業務の効率化や自動化も可能となりました。エージェンティックエンタープライズでは、AIがより人間の可能性を広げる役割を担う方向でイノベーションが起きるとしています。
営業分野においては、AIが人間に代わり業務を行ったり、自動化したりといった従来の機能に加えて、新しく人間のパートナーであるAIエージェントとして、営業活動を行うとしています。AIエージェントは無限に拡張可能なデジタル労働力を駆使して、24時間365日休みなく営業活動を行うことが可能です。そして見込み顧客を逃すことなく効率的かつ効果的なアプローチやフォローが可能となり、パートナーである人間もAIエージェントが収集、学習した情報を24時間365日利活用することができます。
AIエージェントにより休むことなく行われる確実な営業活動により、企業の生産性向上や事業規模の拡大、従業員体験の向上、コストの削減、顧客への大きな付加価値の提供といったことが実現できるとしています。
Agentforce 360は、エージェンティックエンタープライズを実現するプラットフォーム製品として2025年10月13日、Salesforce社によって提供開始されました。
Agentforce 360はSalesforceが過去26年にわたって開発したAIエージェントが搭載されているのが特徴です。AIエージェントは、CRM、自動化、分析の分野で急成長し、世界の多くの企業から高い信頼を得てきた、Salesforceのテクノロジーによって稼働しています。Agentforce 360は、人間、AIエージェント、データが信頼性と安全性の高い単一プラットフォームでつながっているのが特徴です。
Agentforce 360は2025年10月に発表ニュースが出されるまで、24ヶ月間にわたり以下4回のバージョンとしてリリースされています。
4回のバージョンアップを通じて、AIエージェントはただ顧客へサービスを提供するのではなく、人間である従業員や他のAIエージェントとの連携と業務効率化を実現できるようになりました。
Agentforce 360は、エージェンティックエンタープライズを実現するための4つの基盤から構成されています。4つの基盤の持つ機能と特徴を順に解説します。
人間と一緒に推論、行動、協働し、大企業レベル(エンタープライズグレード)で運用できるAIエージェントを支えるための基盤です。より高度な予測ができ、より人間らしい対応を可能とした、以下の機能も搭載されています。
すべてのAIエージェントへコンテキスト(文脈)を提供する統合データレイヤーアプリケーションです。信頼性が高い環境下で構造化データと非構造化データの両方の有効化を実現しています。
AIエージェントを取り扱う企業側が、非構造化データや分析結果をAI学習に向けて変換する際に稼働する、Intelligent ContextやTableau セマンティックなどの技術を搭載しています。この結果、従来よりも豊富な文脈へのデータ変換およびAIの深い理解が実現しています。
ビジネスワークフロー内で直接動作する会話型AIエージェントです。以下の分野における企業の業務上のルールや業務処理方法(ビジネスロジック)のノウハウ、組織についての知識をあらかじめ学習しているため、会話での指示に対してスムーズに対応を行います。
Slackは人間とAIエージェントがひとつにまとまり、協働を実現できる会話型インターフェースです。以下がリアルタイムで統合されています。
ただ会話形のチャットツールとして使用するのではなく、Slack上に業務で必要なすべての情報をまとめることで、社内外を問わずメンバー全員が全体像を把握しながらの業務遂行をできるようになります。
Salesforce社は、エージェンティックエンタープライズを実現するために、Agentforce 360を通じて関連組織や企業とパートナーエコシステムを構成しています。パートナーエコシステムに参加するおもな企業や、Agentforce 360での機能について解説します。
Salesforce社はOpenAIと提携することで、Agentforce 360とOpenAIのフロンティアモデルを統合しています。企業は以下のように、OpenAIのソリューションをSalesforceの各プラットフォームで活用できるようになりました。
Googleとの戦略的パートナーシップ拡大により、以下がAgentforce 360で可能となりました。 ・AIエージェントの100種類以上の事前構築済みコネクタ、ワークフローや統合機能を提供 ・SlackでのAIエージェントの自然言語回答にGoogle Driveを使用 ・Google GeminiのモデルをAIエージェントモデルとして選択可能
Amazonとの戦略的パートナーシップにより、Agentforce 360には以下の機能が搭載されています。
以下のパートナー企業から提供されるAIエージェントやアプリを、Slackワークスペース内で活用できるようになりました。
Agentforce 360を導入することで得られるメリットや、AIエージェントによって解決が期待できる課題について解説します。
従来のAIではユーザーが毎回指示をする必要がありましたが、AIエージェントは判断力と自律性、適応能力を持っているため、指示なしでも業務遂行や目標達成に向け、自ら判断したうえでの処理が可能です。複数タスクや高度なタスク処理も自動かつ高い精度でこなせるようになりました。AIエージェントが一連の業務を自動で行うことで、高い生産性向上や業務効率化につながるでしょう。
Agentforce 360は営業・マーケティング・カスタマーサポートといった、複数部門の会話やタスクをシームレスに連携できます。部門間で顧客対応に差ができないことで、顧客はどの部署への問い合わせや相談でもスムーズかつ適切な対応を受けられるでしょう。営業担当者は最新の顧客情報を共有しながらの最適な提案やフォローが可能になり、顧客満足度の向上につながります。
Agentforce 360が稼働するのは、厳格なセキュリティ基準を整備したSalesforceプラットフォーム上です。蓄積する情報やデータも厳重に保護されているのに加えて、アクセス制御や暗号化を適用する機能としてTrust Layerも搭載されています。生成AIが情報やデータを利用する際には、個人情報や機密情報が不適切に参照されないように設計されていることも特徴です。
また、AIエージェントの動作状況や応答品質を常時モニタリングするための可観測性ソリューションも採用されています。AIエージェントの想定外の動作や、一定以上の処理遅延といったリスクを早期に検知するため、安定した運用が可能です。金融機関、病院や公共機関など高いセキュリティが求められる業界でもAgentforce 360は安心して導入できるでしょう。
Agentforce 360と併用するData360(DataCloud)は、外部データベースに当たる既存データウェアハウス(DWH)に保存されたデータを活用する際の技術には、コピーやフォーマット変更不要でそのまま活用できるゼロコピー統合が採用されています。データ移行の手間やコストが不要で、統合データ分析やAI活用をすぐに開始できるのがメリットです。
Agentforce 360にはあらかじめ業界別に営業支援、問い合わせ対応、マーケティング施策などのアクションが構築されています。初期の段階から高い実用性を持ってAIエージェントを運用できるため、導入直後からビジネス上でスピーディかつ柔軟な対応が可能です。
すでにAgentforce 360を導入した12,000社(2025年12月時点)では、働き方の変革や営業成果などを出しています。Salesforce公式サイトより、Afenttforce 360を導入した企業の成果や成功事例を紹介します。
Agenforce 360導入により、サポートケースの46%回避、解決時間の84%短縮、および平均応答時間の8.9分から1.4分への短縮を実現しました。営業担当者の、反復的な問い合わせへの対応が不要になったことで業務の効率化、および顧客へのオンデマンド支援の提供により顧客満足度の20%向上にもつなげています。
一般的な勤務時間外に発生する採用候補者との会話の51%をAIエージェントが対応することで、大量の業務自動化と採用担当者の業務時間改善を実現しました。AIエージェント対応により得た時間は、顧客エンゲージメント向上に充てています。
導入後わずか数週間で、レストラン向けAIエージェントが顧客(レストラン側含む)からの問い合わせの70%を自律的に解決できるようになりました。スピーディな導入に加えて、AIエージェントはレストラン業界に求められる温かみのある対応も行っています。
Agentforce 360の音声機能により、自社の独自ブランド体験を直接顧客へ届けられるようになったことに加え、処理時間の15%短縮にも成功しました。その結果、年間200万ドル以上のコスト削減を実現しています。
Agentforce 360が顧客へのリアルタイムでの更新情報提供、節約額の明示のほか、必要に応じて事前準備したアジェンダの提供などを行うことで、確定申告の時期に90%の問い合わせ対応の回避を実現しました。
Salesforceが新しくリリースしたAgentforce 360の概要やAIエージェントと人間によるエージェンティックエンタープライズについて、総合的に解説しました。AIエージェントはただ指示に従って業務の効率化や自動化を行う従来のAIとは異なり、自社の業種や顧客の状態などを鑑み、より人間らしい対応を自律的におこなえるテクノロジーです。Agentforce 360の導入によって、自社および人間の持つ可能性を広げる、頼もしいAIエージェントをパートナーとしたうえでのビジネス展開が期待できるでしょう。
当サイトでは、顧客接点DXソリューションに関するダウンロード資料を多数ご用意しております。ぜひダウンロードいただき、資料をご活用ください。
※本記事の内容に関しましては2026年04月09日の情報を基に作成しています。 詳しい内容につきましては各製品・サービス・ソリューションサイトにお問合せください。
2026年04月13日
Salesforce定着化の実行計画と支援サービスの活用法を解説(Vol-146)
2026年04月06日
Microsoft Copilotで使えるおすすめプロンプト集【事例付き】(Vol-145)
2026年03月30日
Salesforceのセキュリティ対策|企業側の設定について(Vol-144)
2026年03月23日
コンタクトセンター・コールセンターのAI活用|導入事例やメリットを解説(Vol-143)
2026年03月16日
Microsoft Copilotの活用事例紹介|企業の生成AI導入の成功ポイント(Vol-142)
2026年03月09日
フィールドサービス管理システム(FSM)の機能やメリットとは?導入時のポイントも解説(Vol-141)
全社的なDX推進や顧客接点の最適化、エンゲージメントの強化などお困りごとやお悩みがございましたら、お気軽にお問い合わせください。