SalesforceのExperience Cloudは、顧客やパートナーなど外部ステークホルダーとのデジタル接点を構築するための強力なプラットフォームです。しかし、その導入にあたっては、ユーザーの役割や業務内容に応じたライセンス選定が極めて重要です。
本記事では、「Salesforce Experience Cloudライセンス選定ガイド」と題して、Experience Cloudにおけるライセンス体系の全体像と、それぞれのライセンスの特徴・選定ポイントについて詳しく解説します。
ユースケース別のおすすめライセンスや、実際の構成例、運用時の注意点までを網羅的にご紹介し、導入検討中の方が最適な選択を行えるよう情報をお届けします。
目次
ユーザー分類の基本:「内部ユーザー」と「外部ユーザー」
Salesforceライセンス設計において最初に理解すべきポイントは、「内部ユーザー」と「外部ユーザー」の違いです。
Experience Cloudは、主にこの外部ユーザーを対象としたライセンス体系を提供しています。
外部ユーザーはSalesforceの「Customer User」や「Partner User」として登録され、必要最小限の機能・データアクセスに基づいてライセンスの選定を行います。
ライセンスの分類概要
Experience Cloudには、目的やアクセス範囲、対象ユーザーの規模感などに応じて、複数のライセンスオプションが用意されています。以下が、主要なライセンスの分類です。
ライセンス名
主な対象
特徴
Commerce Portals
EC利用者
限定的アクセスでのEC導線構築に特化
Customer Community
顧客(大規模)
認証あり・基本機能のみ/大規模利用向け
Customer Community Plus
顧客(中〜小規模)
共有設定・レポート・階層ロール利用が可能
Partner Community
代理店・取引パートナー
商談・リード・キャンペーンなど営業支援機能が充実
Channel Account
大規模販売ネットワーク
パートナーモデルの大規模展開、階層管理に強み
External Apps
開発者/特殊業務
カスタムUIやAPI連携前提の柔軟な構成
ライセンス選定の考え方
ライセンスを選ぶ際に考慮すべきポイントは以下の通りです。
経験則としては、「機能は必要最小限に抑え、コスト対効果を最大化」する選定が基本です。そのため、Customer Community PlusやPartner Communityは非常にバランスのとれた選択肢として多くの現場で選ばれています。
ユースケース
推奨ライセンス
備考
FAQ・ケース管理のみ(レポートなし)
コスト重視/数千~数万人向けに最適
顧客がKPIや契約レポートを参照
共有設定+レポート表示が必要
パートナーが商談・リードを登録し営業活動を実施
B2B共同営業向け
代理店ごとのアクセス制御・階層共有が必要な大規模チャネル構成
大企業向け
請負業者が外部申請や報告アプリを使うWebフロント構成
APIとカスタムUI連携前提
ECサイトの顧客に限定機能を提供
UI簡易/安価/構築スピード重視
各ライセンスの詳細比較
Experience Cloudのライセンスは、ユーザーの種類や業務目的に応じて選定する必要があるため、用途・機能・権限・コストのバランスを理解することが重要です。ここでは、それぞれのライセンスの特徴や適したケース例を順に解説します。
主な用途: 小売・ECサイトなど、ログインユーザーによる購入・注文履歴確認
特徴:
適したケース例:
主な用途: 多数の顧客に対するFAQ公開や、ケース作成・ステータス確認の提供
主な用途: 顧客がレポートを確認するなど、グループ単位での情報共有
主な用途: 販売代理店・B2Bパートナー向けに、営業活動全体を包括的に支援
主な用途: パートナービジネスがより複雑かつ大規模な企業向けの高機能ライセンス
主な用途: Experience Cloudを基盤としたフルカスタムのWebアプリケーションを提供
業務委託先向け業務アプリ(例:作業報告書提出、点検写真アップロードなど)
ユースケース別のライセンス比較
Experience Cloudのライセンスは、対象ユーザーの役割・求められる機能・アクセス範囲・予算などに応じて適切な選定が必要です。本章では、主な判断材料を以下の軸で比較していきます。
主な利用対象
EC顧客
一般顧客
共有やレポートを要する顧客
販売代理店/パートナー
大規模チャネル構成
開発者/委託業者等
商談/リードの利用
×
◯
△
(カスタム)
レポート/ダッシュボード表示
階層型ロール共有設定
カスタムオブジェクトの利用
△(制限あり)
API連携
◎(上限大)
主な課金単位(例)
ページビュー/月
アクティブユーザー/月
同左
ユーザー or Elastic
注:◎は最も柔軟/高機能を示す。△は利用に制限があることを示す。
参考:Salesforceヘルプ >Experience Cloud ユーザーライセンス
ライセンスごとのコスト比較の考え方
Salesforceのライセンス費用は一律ではなく、導入形態や契約モデルにより異なるため、概算ベースでの傾向を以下に示します:
ユースケース別おすすめライセンス早見表
ライセンス構成の基本的な考え方
Experience Cloudを導入する際の設計でまず重要になるのは、内部ユーザー(社員など)と外部ユーザー(顧客やパートナーなど)で必要とされる機能・アクセス範囲を明確に区分することです。
この整理により、過剰なライセンス付与や無駄なコストを避けた構成が実現可能になります。
要件整理例
最適ライセンスの選定例
上記の要件に対しては、Customer Community Plusが最もフィットします。理由は以下の通りです。
設定上の留意点
その他の構成例
要件概要
補足
パートナーが直接案件を登録し、営業情報をやりとり
商談・リード・キャンペーンが必要な場合
社内プロジェクト参加者に限定機能を提供
カスタムUI+独自業務に特化したアプリケーションが想定される
一般顧客向けにFAQと問い合わせフォームのみ提供
レポートや共有設定不要であれば最も安価
ライセンス選定の全体フロー
Experience Cloud導入におけるライセンス選定は、「どのユーザーに、どのような業務を許可し、どの機能を使わせるか」を整理するプロセスとも言えます。以下のフローでの検討がおすすめです。
ステップ1:ユースケースの明確化
ステップ2:アクセス要件の洗い出し
ステップ3:適合するライセンス候補の特定
ステップ4:構成の検証と権限設計
ステップ5:ライセンス契約と本番展開
運用保守における注意点:ライセンス契約・管理の落とし穴と対応策
ライセンスの運用保守においては、以下のような点に注意が必要です。
アクティブユーザー数と課金形態のズレ
ライセンス移行の制約
アクセス権限・可視性に関する注意点
チェックポイント
説明
外部ユーザーによるレポート閲覧
Plus以上のライセンスが必要。閲覧対象はフォルダ単位で公開設定が必要。
オブジェクト共有の制御
「組織の共有設定+ロール階層+共有ルール」で制御。手動共有は使用不可な場合が多い。
ファイル・ドキュメントの共有
ファイルの「公開先」設定がExperience Siteとリンクしていないと、アクセス不可エラーになることがある。
ナビゲーションメニュー構成
表示権限とナビゲーション設定は別管理。オブジェクト権限だけではメニューに出ない場合あり。
「Salesforce Experience Cloudライセンス選定ガイド」と題して、ご説明をしてまいりました。Experience Cloudのライセンスは、対象ユーザーの役割や業務目的、必要な機能に応じて多様な選択肢が用意されており、適切な選定が導入の成否を左右します。
特に、「Customer Community」と「Customer Community Plus」の違いや、「Partner Community」「External Apps」などの高度なライセンスの活用場面を理解することが重要です。
ライセンス選定では、ユースケースの明確化、アクセス要件の整理、コストと機能のバランスを踏まえた検証が不可欠です。また、契約後の運用においても、アクティブユーザーの管理や権限設計、ナビゲーション設定など細部にわたる配慮が求められます。
本記事が、Experience Cloud導入に向けたライセンス選定の一助となり、より効果的な顧客・パートナー体験構築に向けた一助となれば幸いです。
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