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Salesforce Experience Cloudライセンス選定ガイド (Vol.124)

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  • 最終更新日:

SalesforceのExperience Cloudは、顧客やパートナーなど外部ステークホルダーとのデジタル接点を構築するための強力なプラットフォームです。しかし、その導入にあたっては、ユーザーの役割や業務内容に応じたライセンス選定が極めて重要です。

本記事では、「Salesforce Experience Cloudライセンス選定ガイド」と題して、Experience Cloudにおけるライセンス体系の全体像と、それぞれのライセンスの特徴・選定ポイントについて詳しく解説します。

ユースケース別のおすすめライセンスや、実際の構成例、運用時の注意点までを網羅的にご紹介し、導入検討中の方が最適な選択を行えるよう情報をお届けします。

Experience Cloudライセンスの種類と分類体系

ユーザー分類の基本:「内部ユーザー」と「外部ユーザー」

Salesforceライセンス設計において最初に理解すべきポイントは、「内部ユーザー」と「外部ユーザー」の違いです。

  • 内部ユーザー:Sales CloudやService CloudなどのコアCRM機能を利用し、営業・マーケティング・サポート業務を行う社員・スタッフ
  • 外部ユーザー:顧客、パートナー、ディストリビューター、自治体職員、請負業者など、企業外部のステークホルダー

Experience Cloudは、主にこの外部ユーザーを対象としたライセンス体系を提供しています。

外部ユーザーはSalesforceの「Customer User」や「Partner User」として登録され、必要最小限の機能・データアクセスに基づいてライセンスの選定を行います。

ライセンスの分類概要

Experience Cloudには、目的やアクセス範囲、対象ユーザーの規模感などに応じて、複数のライセンスオプションが用意されています。以下が、主要なライセンスの分類です。

ライセンス名 

主な対象 

特徴 

Commerce Portals 

EC利用者 

限定的アクセスでのEC導線構築に特化 

Customer Community 

顧客(大規模) 

認証あり・基本機能のみ/大規模利用向け 

Customer Community Plus 

顧客(中〜小規模) 

共有設定・レポート・階層ロール利用が可能 

Partner Community 

代理店・取引パートナー 

商談・リード・キャンペーンなど営業支援機能が充実 

Channel Account 

大規模販売ネットワーク 

パートナーモデルの大規模展開、階層管理に強み 

External Apps 

開発者/特殊業務 

カスタムUIやAPI連携前提の柔軟な構成 

ライセンス選定の考え方

ライセンスを選ぶ際に考慮すべきポイントは以下の通りです。

  • ユーザーの役割と使用目的:問い合わせ対応だけでよいのか、商談やレポート機能も必要か
  • 想定ユーザー数と頻度:ログインベース or アクティブユーザー数ベースでコストを最適化
  • 必要なデータ/オブジェクトへのアクセス範囲:商談、リード、カスタムオブジェクトなどにアクセスが必要か否か
  • 拡張性と統合要件:外部システムとの連携やカスタマイズの自由度をどこまで必要とするか

経験則としては、「機能は必要最小限に抑え、コスト対効果を最大化」する選定が基本です。そのため、Customer Community PlusやPartner Communityは非常にバランスのとれた選択肢として多くの現場で選ばれています。

ユースケース別・ライセンス比較表

ユースケース 

推奨ライセンス 

備考 

FAQ・ケース管理のみ(レポートなし) 

Customer Community 

コスト重視/数千~数万人向けに最適 

顧客がKPIや契約レポートを参照 

Customer Community Plus 

共有設定+レポート表示が必要 

パートナーが商談・リードを登録し営業活動を実施 

Partner Community 

B2B共同営業向け 

代理店ごとのアクセス制御・階層共有が必要な大規模チャネル構成 

Channel Account 

大企業向け 

請負業者が外部申請や報告アプリを使うWebフロント構成 

External Apps 

APIとカスタムUI連携前提 

ECサイトの顧客に限定機能を提供 

Commerce Portals 

UI簡易/安価/構築スピード重視 

 

各ライセンスの詳細比較

Experience Cloudのライセンスは、ユーザーの種類や業務目的に応じて選定する必要があるため、用途・機能・権限・コストのバランスを理解することが重要です。ここでは、それぞれのライセンスの特徴や適したケース例を順に解説します。

Commerce Portals 

主な用途: 小売・ECサイトなど、ログインユーザーによる購入・注文履歴確認 

特徴: 

  • 限られたオブジェクトとUIで「EC体験」に最適化 
  • 高度なCRM機能は非対応(商談やカスタム共有設定不可) 
  • 無料または低コストで大規模展開可能(ページビュー単位課金) 

適したケース例: 

  • 商品購入履歴や納品状況の確認 
  • 配送ステータスのセルフチェック機能の提供 

 

Customer Community 

主な用途: 多数の顧客に対するFAQ公開や、ケース作成・ステータス確認の提供 

特徴: 

  • ログイン型またはアクティブユーザー型ライセンス 
  • 基本的なSalesforce標準オブジェクトへのアクセスが可能(カスタムオブジェクトも可) 
  • 共有設定は制限が多く、他ユーザーの情報閲覧は不可 

適したケース例: 

  • サポート窓口への問い合わせチケット作成 
  • 製品マニュアル・ガイドラインの閲覧 

 

Customer Community Plus 

主な用途: 顧客がレポートを確認するなど、グループ単位での情報共有 

特徴: 

  • 通常のCustomer Communityに比べて大幅に機能強化 
  • レポート/ダッシュボード表示が可能 
  • ロール階層に基づく共有設定ができる 

適したケース例: 

  • 顧客グループ単位のコンテンツ共有(例:施主別) 
  • 状況レポートやKPIのセルフ閲覧 
  • 要件例:「商談やリードは不要/レポートは必要」→ Plusライセンスが適合 

 

Partner Community 

主な用途: 販売代理店・B2Bパートナー向けに、営業活動全体を包括的に支援 

特徴: 

  • 商談、リード、見積、キャンペーンなどの標準オブジェクトが利用可能 
  • 内部Salesforceユーザーと同等の権限範囲を設定可能 
  • ロール階層、承認フローの活用も可能 

適したケース例: 

  • パートナーが直接見込み客をSalesforceに登録 
  • パートナーが取引先担当者を管理し、商談進捗を内部ユーザーと共有 

 

Channel Account 

主な用途: パートナービジネスがより複雑かつ大規模な企業向けの高機能ライセンス 

特徴: 

  • Partner Communityと類似機能ながら、アクティブユーザー数に基づくスケーラブル設計 
  • 階層構造やアクセス制御がより高度に設定可能 
  • 大規模エンタープライズ向け 

適したケース例: 

  • 多段階代理店モデルでのチャネル管理 
  • 代理店別売上レポートの共有・評価 

 

External Apps 

主な用途: Experience Cloudを基盤としたフルカスタムのWebアプリケーションを提供 

特徴: 

  • API上限が多く、外部システム連携を前提とした設計 
  • Lightning App BuilderやAura/LWCを活用した自由なUI構築 
  • 料金設計はElastic(弾力課金)モデルが多い 

適したケース例: 

  • 行政・自治体の電子申請フォーム 

業務委託先向け業務アプリ(例:作業報告書提出、点検写真アップロードなど)

 

ユースケース別のライセンス比較

Experience Cloudのライセンスは、対象ユーザーの役割・求められる機能・アクセス範囲・予算などに応じて適切な選定が必要です。本章では、主な判断材料を以下の軸で比較していきます。

 

Commerce Portals 

Customer Community 

Customer Community Plus 

Partner Community 

Channel Account 

External Apps 

主な利用対象 

EC顧客 

一般顧客 

共有やレポートを要する顧客 

販売代理店/パートナー 

大規模チャネル構成 

開発者/委託業者等 

商談/リードの利用 

× 

× 

× 

 

 

 

(カスタム) 

レポート/ダッシュボード表示 

× 

× 

 

 

 

 

階層型ロール共有設定 

× 

× 

 

 

 

 

カスタムオブジェクトの利用 

△(制限あり) 

 

 

 

 

 

API連携 

× 

 

 

 

 

◎(上限大) 

主な課金単位(例) 

ページビュー/月 

アクティブユーザー/月 

同左 

同左 

同左 

ユーザー or Elastic 

注:◎は最も柔軟/高機能を示す。△は利用制限があることを示す。 

参考:Salesforceヘルプ >Experience Cloud ユーザーライセンス 

 

ライセンスごとのコスト比較の考え方

Salesforceのライセンス費用は一律ではなく、導入形態や契約モデルにより異なるため、概算ベースでの傾向を以下に示します:

  • Commerce Portals:月間ページビュー数ベースの従量課金。低価格帯スタートだがトラフィックが多いと増額。 
  • Customer Community(Plus含む)/Partner Community/Channel Account:アクティブユーザー数 × 単価(月額)。年次契約が多く、最低契約ユーザー数あり。 
  • External Apps:Elastic License形式やAPI呼び出し数に基づく課金が一般的で、予測が難しいが柔軟性は高い。 

ユースケース別おすすめライセンス早見表

ユースケース 

推奨ライセンス 

備考 

FAQ・ケース管理のみ(レポートなし) 

Customer Community 

コスト重視/数千~数万人向けに最適 

顧客がKPIや契約レポートを参照 

Customer Community Plus 

共有設定+レポート表示が必要 

パートナーが商談・リードを登録し営業活動を実施 

Partner Community 

B2B共同営業向け 

代理店ごとのアクセス制御・階層共有が必要な大規模チャネル構成 

Channel Account 

大企業向け 

請負業者が外部申請や報告アプリを使うWebフロント構成 

External Apps 

APIとカスタムUI連携前提 

ECサイトの顧客に限定機能を提供 

Commerce Portals 

UI簡易/安価/構築スピード重視 

 

実際のライセンス構成例とアーキテクチャ設計

ライセンス構成の基本的な考え方

Experience Cloudを導入する際の設計でまず重要になるのは、内部ユーザー(社員など)と外部ユーザー(顧客やパートナーなど)で必要とされる機能・アクセス範囲を明確に区分することです。

  • 内部ユーザーは、Sales CloudやService Cloudなどの“完全なCRMライセンス”を有し、システム全般の管理や、商談管理、リード追跡、ダッシュボード操作、ワークフロー設定など幅広い機能を扱います。 
  • 外部ユーザーは、Experience Cloudライセンスを通じて必要最小限のオブジェクト/機能のみアクセスできるよう制御されます。 

この整理により、過剰なライセンス付与や無駄なコストを避けた構成が実現可能になります。

要件整理例 

  • 外部ユーザーは契約関係者や発注者などのビジネスステークホルダー 
    • 次の機能は 不要:商談、リード、見積、キャンペーンなどの営業向けオブジェクト
    • 次の機能は 必要:レポートやダッシュボードでプロジェクト進捗や納品状況を閲覧、自身のグループ単位でのデータ共有(例:同一発注元のグループ) 

            最適ライセンスの選定例 

            上記の要件に対しては、Customer Community Plusが最もフィットします。理由は以下の通りです。 

            • レポート/ダッシュボード閲覧が可能(Customer Communityは不可)
            • 階層ロールによる「グループ単位でのデータ共有」に対応
            • 商談・リードのオブジェクトが不要なためPartner Communityまでの機能は不要

            設定上の留意点 

            • プロファイルと権限セット:外部ユーザー向けに最低限必要なオブジェクトの閲覧・更新権限を付与 
            • ロール階層設計:グループ単位のロール設定を行い、上位ロールが下位データを閲覧できるよう設定 
            • 共有ルール:ケースやドキュメントなどの共有対象オブジェクトに対して条件付き共有ルールを設計 

             

            その他の構成 

            要件概要 

            推奨ライセンス 

            補足 

            パートナーが直接案件を登録し、営業情報をやりとり 

            Partner Community 

            商談・リード・キャンペーンが必要な場合 

            社内プロジェクト参加者に限定機能を提供 

            External Apps 

            カスタムUI+独自業務に特化したアプリケーションが想定される 

            一般顧客向けにFAQと問い合わせフォームのみ提供 

            Customer Community 

            レポートや共有設定不要であれば最も安価 

            オススメするライセンス選定フローや運用保守における注意点 

            ライセンス選定の全体フロー 

            Experience Cloud導入におけるライセンス選定は、「どのユーザーに、どのような業務を許可し、どの機能を使わせるか」を整理するプロセスとも言えます。以下のフローでの検討がおすすめです。 

            ステップ1:ユースケースの明確化 

            • 「誰が何をしたいのか?」を可視化 
            • 社内外の関係者一覧と必要な機能を整理(例:ケース作成、レポート閲覧など) 

            ステップ2:アクセス要件の洗い出し 

            • 使用対象オブジェクト(商談?リード?カスタム?)とアクセスレベル(閲覧だけ?編集も?) 
            • 同一グループ間でのデータ共有の必要性の有無 

            ステップ3:適合するライセンス候補の特定 

            • 必要な機能/制限/人数を比較表から照合 
            • コスト感や拡張性も踏まえて絞り込み 

            ステップ4:構成の検証と権限設計 

            • Sandboxなどでプロファイル/権限セット/ロール設計を検証 
            • Experience Siteのメニューやレポート表示、オブジェクトアクセスを確認 

            ステップ5:ライセンス契約と本番展開 

            • 利用数に応じた契約をSalesforceと締結 
            • ユーザー招待や操作ガイドの配布を行い、運用開始 

             

            運用保守における注意点:ライセンス契約・管理の落とし穴と対応策 

            ライセンスの運用保守においては、以下のような点に注意が必要です。 

            アクティブユーザー数と課金形態のズレ 

            • 多くのライセンス(Customer Community Plus等)は「アクティブユーザー数課金」が前提となっている。 
            • 非アクティブユーザーでも削除や無効化しない限りライセンス課金対象となる可能性がある。 
            • 定期的な利用状況レポートと不要ユーザーの凍結/削除フローを設けることが重要。 

            ライセンス移行の制約 

            • Communityライセンス間の変更(例:Customer Community → Customer Community Plus)にはSalesforce社との契約調整が必要な場合が多い。 
            • また、ユーザープロファイルや権限セットに依存した構成であれば、ライセンス移行後にアクセスエラーやUI不整合が発生することも。 
            • 移行前にはSandbox検証+必要な設定変更の洗い出しを実施することを推奨。 

             

            アクセス権限・可視性に関する注意点

            チェックポイント 

            説明 

            外部ユーザーによるレポート閲覧 

            Plus以上のライセンスが必要。閲覧対象はフォルダ単位で公開設定が必要。 

            オブジェクト共有の制御 

            「組織の共有設定+ロール階層+共有ルール」で制御。手動共有は使用不可な場合が多い。 

            ファイル・ドキュメントの共有 

            ファイルの「公開先」設定がExperience Siteとリンクしていないと、アクセス不可エラーになることがある。 

            ナビゲーションメニュー構成 

            表示権限とナビゲーション設定は別管理。オブジェクト権限だけではメニューに出ない場合あり。 

            まとめ

            「Salesforce Experience Cloudライセンス選定ガイド」と題して、ご説明をしてまいりました。Experience Cloudのライセンスは、対象ユーザーの役割や業務目的、必要な機能に応じて多様な選択肢が用意されており、適切な選定が導入の成否を左右します。

            特に、「Customer Community」と「Customer Community Plus」の違いや、「Partner Community」「External Apps」などの高度なライセンスの活用場面を理解することが重要です。

            ライセンス選定では、ユースケースの明確化、アクセス要件の整理、コストと機能のバランスを踏まえた検証が不可欠です。また、契約後の運用においても、アクティブユーザーの管理や権限設計、ナビゲーション設定など細部にわたる配慮が求められます。

            本記事が、Experience Cloud導入に向けたライセンス選定の一助となり、より効果的な顧客・パートナー体験構築に向けた一助となれば幸いです。

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